40.封印
「確かにそうだが……何故分かったんだ?」
半ば反射的に頷いたティレフだったが、良く考えてみれば自分がまだ話の途中の筈なのに、何故その遺跡嵐の犯人達が水色のコートの集団だと言うのがリュディガーに分かったのだろう? と疑問をぶつけてみる。
それはリュディガーが経験した事が関係していた。
「事情聴取の時にもお話したと思いますが、俺はその水色のコートの集団のリーダーと思わしき男と対峙しています。オレンジ色の髪の毛をした、痩せ身の魔術師の男です。それに封印と言う単語を聞いて察したのですが、そのリーダーの男は俺に対してかなり強大な魔術を駆使していた記憶があるので、もしかしたら魔術で封印を解いたのかな……と」
「ふむ、確かにそうかも知れないな」
実際の所、ティレフにも詳しい事情は入って来ていないらしいのだが、3か月経って急にまたそのコートの集団が、しかも皇都のネルディアに現れたとなれば見逃す筈は無かったのではないか?。
その辺りが引っ掛かる4人だが、ティレフ曰く皇都は人が多いので人混みに紛れ込まれてしまえばなかなか見過ごしてしまう事も多いらしい。
「とにかく、その水色のコートの集団は色々とやらかしているみたいね」
「俺達が出会ったピンクのコートの集団もな。とにかくそいつ等がまだこの国に居る可能性は非常に高いから、さっさとヴィルトディンに向かおう」
トリスとバルドの意見によって、戦争が起きる前にヴィルトディンに行ってしまおうと決めたのもあって一行は北を目指す事に。
だが、その途中でティレフから北にある遺跡の情報がもたらされる。
「南東にある遺跡はその水色のコートの集団に襲われてしまったが、北の方にある遺跡に関しては今の所、騎士団が常駐しているから調べるには持って来いの筈だ。そっちの方には俺から連絡を回しておくから、気になったら行ってみると良い」
「分かりました。ありがとうございます」
別に遺跡を探索しにこのバーレン皇国までやって来た訳では無いのだが、ロナ曰くこんな話を以前耳にした事があるらしい。
「その遺跡の方も封印が掛かっているのですが、最近そちらに遠征に向かった弓隊のグラルダー隊長から気になる報告があったんです」
「報告?」
「はい。その封印なんですが誰かが一旦封印を解いて、また掛け直した形跡があるとの報告が」
「ちょっと待って下さい、それはもしかするとそのコートの集団の話では?」
フェリシテがロナに聞いてみるが、代わりにティレフがその疑問に回答する。
「いや、それは無い。そっちからの報告ではコートの集団が遺跡に現れたと言う話は無いから違う筈だ。確かピンクのコートの集団が西の方面に出没していて、実際に御前達も交戦したと話を聞いているが、そのピンクのコートだったらかなり目立つだろうしな」
「そりゃまぁ、そうか……」
バルドとフェリシテが出会ったあのメガネの男率いるピンクのコートの集団じゃない。
しかし、あの水色のコートの集団が現れたと言う話も入っていない。
封印を解いたと考えられるのはそれこそ伝説の冒険家であるルヴィバー・クーレイリッヒ位のものだろうが、彼はとっくの昔にこの世を去っている。
なら一体誰が封印を解いたのだろうか?
冒険者達の口から次々に思い当たる人物の名前が出て来るが、その誰もが違うらしい。
「シェリス様……がまさか封印を解いて……?」
「いや、陛下はその様な力はお持ちでは無い」
「では魔法剣士隊のロオン隊長か、ジェクト副隊長が……?」
「いいや、彼等はその遺跡の封印が解かれた後に調査に向かったメンバーだからそれもあり得ない」
「うーん……だとすると後はロナ様も確か魔術師ですよね?」
「しかし、私はその封印が解かれた時はこの城で執務に励んでおりましたので不可能ですよ」
遺跡の強大な封印が解ける程の強力な魔術が使えそうな人物は、どうやらこの城には居ない様である。
だったらその現地の遺跡に立ち寄った、不審な人物の洗い出しを進めれば良いのでは無いかとリュディガーがティレフとロナに聞いてみるが、既にそれは取り掛かっていたらしい。
「遺跡はこの国の観光名所の1つでもありますが、同時に厳重な騎士団の監視がされているので不審者が入り込むのはまず不可能です。それこそ南の緑のドラゴンの棲み処と思わしき遺跡が、その水色のコートの集団によって襲撃されでもしない限りは」
「ふうむ……そうですか……」
ますます謎は深まるばかりだが、ロナの話を横で聞いていたティレフがある事を思い出した。
「あ、そう言えば……封印が解かれる少し前、画家の人が絵を描きに立ち寄ったって言ってたな」
「画家ですか?」
「ああ、その画家は遺跡の外観を絵に描きたいからって事で、わざわざ画材道具を持って遠くから来たって話だった。確かに彼は絵を描いた後、遺跡の内部を少し見物して帰って行ったって話だけど……その画家、かなりの魔力の持ち主だったって話があったな」
それを先に言ってくれよと思いつつ、バルドとフェリシテは顔を見合わせて頷いた。
「そいつの全身が水色とか青系の色で纏められていたら、もしかして……」
「ええ、間違い無いわね」




