39.ドラゴンと遺跡と
「その内の青いドラゴンと緑のドラゴンの棲み家と思わしき遺跡が、このバーレンの領土の中から発見されました」
「ええっ、そうなんですか!?」
オーバーリアクションのバルドを冷静に手で制しつつ、ロナは話を続ける。
「貴方達はイディリークから来られたと言う事ですが、確かそちらの方にも同じ様な遺跡が1つ存在していた様な……」
「ええ、確かにございます」
山脈の頂上に存在している遺跡について、王宮騎士団員としてその辺りの事情を良く知っているフェリシテが、ロナの確認に首を縦に振った。
「やはりそうですか。見つかっているのはその1箇所だけなんですか?」
「今の所は……そうですね、その1つだけだった筈です」
「そうですか……」
そう言ってロナは、青い手袋に包まれた人差し指と親指を顎に当てて何やら考え込む。
「どうしました?」
不思議に思ったトリスが声を掛けると、ロナは1つの仮定を口に出した。
「確か貴方達は、コートの集団と関わりがあるらしいですね?」
「ええ、まあ……でも関わりって言っても、これ以上関わって来て欲しくない奴等なんですけどね」
嫌な事を思い出したバルドが言葉を濁しながらそう言うが、ロナはそこに目を付けたらしい。
「その遭遇したコートの集団は、この国で出会ったのだけで言えば別々の2つの部隊だとお話を伺っております。イディリークでも同じ様に黒いコートの集団に出会ったとお聞きしましたが、その1つの集団だけで間違いはありませんか?」
「は、はい……」
一体何の話をしているのだろう、とバルドが首を傾げる横でリュディガーが無言で頷く。
「そうですか。でしたら他の国でもそのコートの集団、もしくはその仲間が居る可能性がありますね」
「どう言う事です?」
何でそんな不安になる様な事を言うんだ、との思いから低い声でリュディガーがロナに問うが、若き宰相は全く動じずに続ける。
「これはまだ推測でしか無いのですが、各国のドラゴンに関係する遺跡をそのコートの集団は狙っているのだと思います」
「狙っている?」
「はい。貴方達がイディリーク帝国の皇帝陛下のリュシュター様の誘拐を阻止したと言うのも、身元確認時のそのリュシュター様の連絡によってこちらに情報として入って来ておりますが、その誘拐時に黒いコートの集団が王宮騎士団員と近衛騎士団員に扮して、リュシュター様を何処かに連れ去ろうとしていたらしいですね」
「ええ」
「それで、リュシュター様がおっしゃるには自分が誘拐された後に何故か山の上の方に向かって運ばれていたと。普通なら連れ去るルートとしてダリストヴェル山脈の麓に向かう筈なのに、これは妙だと思ったらしいです。そして、そのダリストヴェル山脈の頂上にはイディリークで発見されたそのドラゴンにまつわる遺跡があるらしいですね」
そこまでロナがリュディガーの方を向いて口に出した所で、黙っていたフェリシテがある事を思い出した。
「そう言えば、確かその遺跡には封印が掛かっていて……それを解除する事に成功したのが確か、ルヴィバー・クーレイリッヒだったって……」
「そうですね。その逸話は冒険日誌にも記載されています」
彼女の話をロナが肯定し、更に話は続く。
「その封印をまた遺跡に掛け、代々イディリークの皇帝が守り継いで行くのだと言う話も聞いていますが……リュシュター様を誘拐して、わざわざ山の上の遺跡がある方に向かうと言う事は……」
「封印を解除させる為に誘拐した……と言う事をおっしゃりたいのですか?」
確認するリュディガーにロナは頷いて、横に控えているティレフに視線を向けた。
「その先は俺から話そう」
ロナからもたらされたその遺跡の話に、彼と一緒に見物していたティレフが追加情報をくれた。
「ロナ様がおっしゃっている事は気分を害するかも知れないが、少し我慢して俺の話も聞いてくれ。俺は3カ月程前から南東の方で、ちょくちょく怪しい集団を見掛ける様になったとの情報をそっちの方に展開している部隊から手に入れていたんだ。その怪しい集団について色々と探りを入れさせたが、奴等もなかなか素早くて情報が途切れ途切れにしか入って来なかった。しかし、ある時その集団の情報が少しだけ多く手に入った時があったんだ」
「それは……!?」
早く早くと続きをせがむ目つきでティレフの方を見つめるトリスに、ティレフは苦笑いしながら続ける。
「それはだな、南東の方で見つかったドラゴンの遺跡でそのコートの集団が遺跡荒らしをしていたんだ」
「遺跡荒らし……ですか?」
「ああ。それも遺跡に掛かっていた封印を解いて、何かを持ち出したと言う報告だった。そのコートの集団を追い掛けた部隊は呆気無く返り討ちにされ、逃げられてしまったらしい」
封印を解いたと言うそのコートの集団の情報を聞いて、ふとリュディガーの中に思い浮かぶ姿が。
「もしかして、そのコートの集団は水色の方じゃなかったですか?」
もしこの予想が合っていれば、彼の話を聞いていて引っ掛かった疑問が確信に変わる。
そう思いながらティレフに聞いたリュディガーに対し、聞かれた本人は首を縦に振った。




