33.行くのか、行かないのか
一体何を頼みに来たのだろうか? とトリスが若干不安そうな顔つきでそう尋ねると、カリフォンがもう決定事項だと言わんばかりの堂々とした口調でその「お願い」を4人に告げる。
「また御前達が旅に出るって言うから、バーレン皇国の領土内で一緒に付き合いたいと思ってな」
「この人、言い出したらなかなか聞かない性格でして……」
しかしいきなりそう言われて「はいそうですか」と承諾出来る様な話でも無い。
「ちょっと待ってくれ、俺達は一緒に行ってくれと頼んだ覚えは無いんだが」
「そうですよ。勝手に決められても困るんですよ」
リュディガーとフェリシテはそのカリフォンの申し出に難色を示すが、一方のバルドとトリスの2人は違った。
「俺は着いて来てくれた方がありがたいけどなー。だって俺達は地元の人間じゃ無えんだし、剣士隊の隊長様ともなれば色々と遠征の経験もあるだろうし、俺達よりも絶対土地勘はあるよ」
「私もそう思うわ。それに騎士団員の人が一緒に着いて来てくれるんなら、色々と困った時に身分を証明してくれそうだし。それに北に向かうんだったらそっち行きの列車だってあるんだし、一緒に乗って行って貰えば良いじゃない?」
何と、4人の中で意見が真っ二つに割れてしまうと言う展開になった。
「で、どうすんだよ。俺と一緒に行くのか行か無いのか決めてくれ」
「誰が最終的に決める?」
「リュディガーで良いんじゃ無いのか? 元々俺達はリュディガーに付き合ってここまで来てる訳なんだからな」
「……うーん……」
「本当に言い出したら聞かない性格でして……申し訳ありません」
まさかここまで真っ二つに意見が割れるとは思っていなかったリュディガーも、それから諦めにも似た感情を抱きながらついて来た魔法剣士隊の隊長のロオンも、どうしようかと非常に悩む素振りを見せる。
確かに彼が着いて来ればそれはそれで頼もしいが、騎士団員に見張られている状態と言う事にもなるので何だか気が進まない。
リュディガーは難色を示すが、そんな悩む状況の続く彼に対して痺れを切らした様子のカリフォンは、ここである1つの提案をする。
「俺が着いて行くのがどうしても不安だって言うなら、俺と一戦やり合ってみねえか?」
「はい?」
「ど、どう言う事ですか?」
いきなりこいつは何を言い出すのだろうか? と何処か可哀そうな物を見る目で4人がそのカリフォンを見つめるが、そんな視線は御構い無しにカリフォンは続ける。
「手合わせだ。御前達のうちの誰かが俺と戦って、俺がそれなりに戦える人間だって言うのが証明されれば、御前達も俺が着いて行くに当たって文句は無えだろ」
「そう言う問題じゃないと思うんだが……」
別に戦わなくても旅は続けられるんだし……と、カリフォンはそのリュディガーの意見を畳み掛ける様にして話し続ける。
「だってよー、そっちの茶髪の奴が言っている通り、俺達の方がこの国には詳しいからな。俺もロオンもこの国で生まれ育った人間だし、この国の騎士団に所属している人間なんだから、冒険者のお前達よりも詳しく国内の各地を案内する事が出来ると思うがな」
それに、と4人が気にしている事に対してズバズバとカリフォンは切り込んで行く。
「お前達は確か、コートを着込んでいる謎の連中と因縁があるんだったな。そいつ等は大所帯だって話も俺達の耳に届いているんだけど、もしこの先の旅でそいつ等に出会った場合、少なくともバーレン皇国を抜けるまでは俺達がついていた方が戦力にはなると思うけどな」
そして、ここでカリフォンはリュディガーの神経を逆撫でする様な事を口に出す。
「俺達じゃ戦力にならないって事か?」
「そうは言っていない。ただ不安なだけだ」
「だから不安も何も無えだろ。俺達が居れば少なくともこのバーレン皇国の中だけは心配は要らねえ。そのコートの連中と会った時に、俺達が戦力になってやるつってんだよ」
「え、私もですか……?」
話の展開的にそうなるかも知れないとは予想していたが、いざ口に出されるとキョトンとしてしまうロオン。
「あたりめーだよ。あんただってバーレン皇国騎士団の一員なんだ。それにどの道そのコートの連中に出会ったら、俺達が治安を守らなきゃいけない立場なんだからそのコートの連中をしょっぴいてやりゃ良いだけの話だろーが」
勢いに押されがちではあるものの、良く良く聞いてみれば確かに筋が通っているようなそのカリファの理由づけのセリフに、最初は反対していたフェリシテも段々態度が変わって来た。
「言われてみればそれもそうかもしれ無いわね」
「フェリシテ、本気で言っているのか?」
「ええ。最初はいきなり凄い事を言われてびっくりしちゃったけど、確かに道案内もしてくれて戦力にもなって頂けるのであれば、私としては全然悪く無い話だと思ったのよね」
だが元々1人旅を希望していたリュディガーは、これ以上旅の仲間が増えるのを余り快くは思っていない。
そんなリュディガーに対してついに何かが切れてしまったカリフォンは、彼の青い手袋をはめている右手を自分の左手で掴み、城の敷地内に引っ張り込む。
「お、おい、何するんだ!?」
「俺が勝ったら着いて行かせて貰うぜ。御前が勝ったら俺は素直に身を引く。それだけの話だ。これから鍛錬場で戦うぞ」
こうしてかなり強引な展開で、元傭兵の冒険者と剣士隊の隊長の手合わせが幕を上げる事になった。




