32.剣士隊隊長の誘い
「じゃあよお、その冒険者連中に休暇ついでに付き合ってみるってのも悪くねえかもな」
「はっ?」
「ちょ、ちょっとカリフォン隊長、いきなり何を言い出すのですか!?」
突拍子も無い事を言い出した銀髪の剣士隊隊長に、主君も魔法剣士隊の隊長も顔色を変えて驚く。
しかし、当の本人はそんな2人の様子等お構い無しに続ける。
「だってよぉ、その冒険者連中がコートの連中の話を知っているんだろ? だったらそいつ等をここから出して一緒について行った方が、冒険者連中がどんな奴等に絡まれるのか分かるかも知れねえじゃん?」
「私は貴方の言っている意味が分かりませんよ……」
「俺もだ。弓隊のグラルダーから話を聞く限りでは、その冒険者達は無実だから牢屋から出すと言う報告は受けている。だけどその後の行動に関して何故一緒に着いて行く必要がある?」
その主君の質問に、カリフォンは実にシンプルに答える。
「休暇だからですよ」
「何?」
「休暇だからこそ俺達は色々と見て回れるんですよ。何も無ければそれで良し。何かあったら解決すりゃ良い。罠があればブチ破れば良い。そもそも今回の事件だって休暇中に起こった事なんですし」
「……分かった。『休暇』を楽しんで来い」
「ありがたき幸せ」
形ばかりの丁寧な返事をして、スタスタと歩き出すカリフォンを残る2人は呆れた表情で見つめる。
「あれで良かったのですか?」
「意志は堅そうだし、止めろと言って止める奴でも無いのは俺が良く分かってる。好きにさせてやれ」
諦めにも似たシェリスの呟きに、ロオンは右手の指を伸ばしてそれをこめかみ付近まで持って行く敬礼で返すと、先に行ってしまったカリフォンの後を追って歩き出した。
「はあ、やっと外に出られるぜ!」
「全くよね。色々な場所に行ってみたかったけど結局行けずじまいだったし、これから先の旅の目的も見つかって無いんじゃ、次に何処に向かうのかを決めないとダメね」
城の軟禁状態から解放されたバルドとフェリシテは、うーんと伸びをしてリラックスする。
一方のハイセルタール兄妹はこれから先の行動を考えていた。
「とりあえず、残っている依頼をまずこなすのが最優先だと思う」
「お兄ちゃんの言う通りだと思うわ。ここの国での依頼は別にキャンセルする必要も無いし、それを終わらせてから他の国に向かっても良いと思うけどね」
「あのコートの集団にこの先でまた会わないかどうか、それだけが問題だがな」
そう、ここでもたついていたらまたあのコートの集団に出会ってしまう可能性がある。
それを避ける為にも、ここはネルディアの依頼をキャンセルして早く他の国に行くのが良いのかも知れないが、みだりに依頼をキャンセルしてしまうとそれだけで冒険者としての評価が落ちてしまう。
なので1度依頼を引き受けた以上は、その中でこなせるものは全てこなして行きたい所だ。
「俺達がネルディアの中で受けた依頼の中で、まだ依頼を完了していないものは幾つあるんだ?」
「そうね、私とバルドさんで大体片付けちゃったんだけど、残っているのを見ると後2つしか無いわね」
「2つか。だったらその2つを終わらせて、今度は北にあるヴィルトディンの方に向かうとしよう」
そう提案するリュディガーだったが、彼の台詞を聞いたバルドの顔が曇った。
「ヴィルトディン……」
「バルドさん、どうしたの?」
「いや、確かあの国って今……隣の国のエスヴェテレスと交戦中じゃなかったかな」
「えっ、それはまずいでしょ!?」
好き好んで交戦中の国に向かうなんて、それこそ傭兵か戦闘狂位のものだ。
「いや、俺もそんな話を聞いただけで、実際に行った訳じゃ無いから分かんねーぞ?」
言いだしっぺのバルドの妙なフォローが入るが、交戦中と言う話を聞く事自体がまず只事では無い。
「じゃあ東にあるシュア王国にするか?」
「北は北でもバーレン皇国の北にあるって言えば、ヴィルトディンもそうだけどファルス帝国もそうよね?」
「ああ、そうだな。だったら北に向かうんであればそっちの方が良いかも知れないな」
ヴィルトディン王国への進軍は後回しにして、先にバーレンの他の隣国であるファルスかシュアの方に向かう事にした4人だったが、城門の前に居る彼等の元に歩み寄って来る人物が。
「騒ぎを起こした冒険者ってのはお前らの事か?」
「ん?」
声のした方に最初にリュディガーが振り向いてみると、そこには赤いロングジャケットを着込んで背中にロングソードを背負っている、1人の若い銀髪の男が居た。
その隣には黒髪の中年の男が控えており、どちらもイディリークの騎士団員であるフェリシテと冒険者のバルドにとってはかなり有名な存在である。
「あれ? もしかして貴方達、皇国騎士団のカリフォン隊長とロオン隊長じゃないですか?」
「そう言えば俺も見た事が……。カリフォン隊長は確か元々冒険者だったらしいですね」
「あーそうだ。俺達を知っていてくれてるとは有名になったもんだぜ」
「それよりも、私達は貴方達にお願いがあって参りました。話を聞いて頂けますか?」
「えっ、私達にですか?」




