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『吉野先輩を守る会』  作者: 虹色
第十三章 ハッピー・エンド♪
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桜の花の下で。  ≪藤野 青≫



3月28日。

ぴいちゃんの家から歩いて15分ほどのところにある桜が満開の公園。

俺たちは大勢でお花見に来ている。



俺たち ―― 。


ぴいちゃんの家族。

お母さん、お祖母さん、真悟くん、将太くん、それにぴいちゃん。

お母さんとお祖母さんがこのお花見の主催者。

3段重ねの重箱2つ分も、お弁当を用意してくれた。


山口さんとそのご両親、それに山口さんの彼女。

穏やかで親しみやすい人たち。


真悟くんの彼女で水泳部の1年先輩だという戸田さん。

遠慮なく厳しいことを言うけど、明るい元気な人だ。


将太くんの部活仲間が3人。

将太くんはそろそろ声変わりらしくて、話す声が苦しそう。


ぴいちゃんの親友の長谷川と和久井。

二人とも大量のおにぎりを持って来てくれた。


早瀬たち4人組。

早瀬、近藤、窪田さんに茜。

真悟くんと戸田さんと一緒にふざけあっている。

・・・近藤と窪田さんは言い争っている方が多そうだけど。


そして、俺。

ぴいちゃんや長谷川たちと一緒に座って、話したり、みんなをながめたりしている。


みんな、それぞれに楽しそうだ。

その中にいられることも楽しい。

楽しいって、幸せなことだ。


そんなことを思ったら、今までのことが次々と、懐かしく浮かんできた。




2年生になってぴいちゃんに会ったことと、彼女と仲良くなるまでの一年。

いろいろな経験をして、友達や仲間と新しい関係が生まれたりした。

忘れられない一年間だった。


3年生になってからもいろいろなことがあったけど、ぴいちゃんと俺はいつも信じ合って、助け合ってきた。

もちろん、友人たちにもたくさん助けられて。



長谷川と和久井は、いつもぴいちゃんの味方だった。

きっと、これからもずっと。

俺も二人を信用している。でも・・・俺をからかうのは、そろそろやめてほしいな。



茜は笹本と、よく近所を手をつないで歩いている。

あの笹本が・・・と、ちょっと感心している。

笹本は秋に推薦で大学が決まってから、家庭教師と称して、週に1、2回はうちに来ている。試験の前は毎日。

はじめは本当に勉強をしているのかと疑っていたけど、笹本はかなり厳しい先生らしい。茜がよく愚痴っている。

でも、どうやらそのおかげで、茜は学校での成績が中くらいで、一年目を乗り切った。



うちに来るといえば、早瀬もだ。

笹本ほどではないけれど、平日でも休日でも、いきなりやって来る。

たいていはちゃんと玄関から来るが、道路から俺の部屋の窓に向かって「藤野せんぱーい。」と呼びかけてくるときもある。

どうしてあいつがこんなに俺になついているのかよく分からないけど、あいつが来ると、つい相手をしてしまう。


ときどき夕飯まで食べていく早瀬に、笹本がやきもちを妬いているのが可笑しい。

早瀬は相変わらずぴいちゃんひとすじで、茜とは単なる友達なのに。


早瀬がなついている相手はもう一人、岡田がいる。


体育祭のチームが岡田と一緒だった早瀬は、6月のチームの顔合わせのときからずっと岡田にくっついていた。

初対面の印象が強烈だったのか、岡田のことを男らしくてかっこいいと思っていて、よく俺に岡田の自慢話をする。

岡田は面倒見がいいし、年下の扱いも慣れていて、早瀬をからかいながらも、ときどき説教なんかもしている。

ちゃっかり小暮とも仲良くなった早瀬は、ぴいちゃんと小暮に挟まれて撮った写真を友達に自慢しているらしい。


こんな甘ったれの早瀬だけど、俺たちの高校最後の大会になる夏の野球の県大会では、岡田と俺にプレゼントをくれた。

吹奏楽部で応援に参加する早瀬が、岡田と俺のために、打席に立ったときのオリジナルの応援曲を作ってくれたのだ。

岡田用の力強い曲と俺用の軽やかな曲が早瀬の吹くトランペットで高らかに響いて、いろいろな想いが交錯する思い出深い試合になった。

そのおかげもあって、去年は3回戦に進出し、上位常連校から3点を奪うという、うちの学校にしては快挙ともいえる成績だった。



そして、ぴいちゃん。


彼女と俺は二人とも、県内にある国立大学に合格した。

4月からも、また一緒に勉強していく。


ぴいちゃんとは受験を通して一層強い絆が生まれた。

以前のように、俺が彼女を守るとか、彼女が俺を助けるとか一方的な関係じゃなく、隣り合ったあさがおのつるのように、お互いの生活のいたるところで結び付いている。

この一年、励まし合って、競争して、ふざけ合って、ときにはけんかして、二人で一緒に成長してきた。

今では欠かせないパートナーというか、お互いがお互いの一部でもあるように感じている。どこも傷つくことなく相手を失うことなど、絶対にあり得ない。


ぴいちゃんはもともとの真面目さに忍耐力と優しさが増して、物静かな落ち着いた雰囲気が深まってきたように見える。

最初から俺をとらえていた大きな瞳は相変わらず魅力的で、楽しそうに輝いたかと思うと、謎めいた深い色に変わったりもする。

彼女独特のユーモアと想像力には磨きがかかって、ますます俺や周囲を驚かせている。


とにかく、ぴいちゃんは素敵な女の子だ。

俺は大学でも、彼氏として気を抜くことができないだろうと思っている。





俺たちはいろいろなことを経験して、いろいろな人と出会って、変わったり、成長したりしてきた。

きっと、これからもそれを繰り返して行くんだろう。

でも、N高で過ごした日々ほど心に残る経験や出会いは、二度とないような気がする。 ―― 今は。



同じ高校という特定の場所で、同じ時間に居合わせた。

ただすれ違うだけで終わったかも知れない相手に、ひとこと話しかけることで始まった関係。

あのとき言ったひとこと、あのとき起こした行動が、次から次へとつながって、今に続く。自分だけではなく、ほかの誰かも巻き込んで。


偶然を、それだけで終わらせなかった。

“終わらせたくなかった” のだろうか?

今となってはわからないけど。



高校生でいられた3年間。

10代の、二度とない時間。

俺たちはそれに別れを告げて、次のステップへと進む。


早瀬や茜、そのほかの後輩たちにも、卒業するときに、楽し思い出とともに振り返ることができる高校生活でありますように。







−−− おしまい。






あとがき・・・です。


最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。


『ぴいちゃん日記』の開始から約半年、なんとか最後に辿り着きました。

『ぴいちゃん日記』とは主人公が変わったので、少し雰囲気の違う作品になりました。

途中、解説が続くような部分もあったりして、じれったく感じられた方もいらっしゃることと思います。

にもかかわらず、ここまでお付き合いいただいたこと、深く深く感謝いたします。


この『吉野先輩を守る会』は、当初は60話くらいで終わるつもりだったのですが、3人をメインに据えたため、それぞれの事情を書いているうちに長くなってしまいました。

ちょっと無謀だったのかも…と思いつつ、やっぱりこのおはなしにはどれも必要に感じられて、切り捨てることができませんでした。

みなさまに楽しんでいただけていたらよいのですけど。


いつも楽しい「書くこと」の中で、今回一番楽しんだのは、藤野くんと響希の言葉遣いです。

藤野くんはぴいちゃんに話しかけるとき、小さい子に話しかけるような感じの部分があり、響希はだんだんと子どもっぽい言葉遣いに変わっていきます。

少し可愛すぎる感じもしますが、そこはご愛嬌ということでお許しください。

また、この二人が仲良くなっていく過程も大いに楽しんで書きました。


それから、容姿についてはあまり書くのが得意ではなく、全体的に曖昧ですみません。

一つだけ申し上げておこうと思ったのは、響希がぴいちゃんのことを「美人」だと言っている点についてです。

響希にとってはぴいちゃんは何でも一番なので、彼の目には世界一の美人です。

本当のところは…みなさまがそれぞれに決めてください。


最後になりましたが、お読みくださった方、感想をお寄せくださった方、お気に入りの登録や評価をしてくださった方、いつもとても励まされました。

本当に、本当に、ありがとうございました。


虹色

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