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089 破壊



 ボブとガリクソンはもみ合いながら、シェルターまで転がってきた。


 シェルターの壁を背にしたボブに、ガリクソンが正拳を振り下ろすが、ボブは避ける。

轟音が響くがシェルターは壊れない。


 ボブはガリクソンを投げて、シェルターから離れた。



「ステータスオープン」



 巨大な漆黒の板は、絶対不壊といわれた教国要人用緊急避難施設『シェルター』の側面を音もなく切断した。


 重厚感のある金属質の板からドス黒い気が放たれ、周囲を暗黒界に変容させていく。

世界の序列が変化した。



「ステータスクローズ」



 正六面体の1面がスッパリと切れ、バタンと倒れた。


 中の魔術的圧縮されていた空間が戻ったのか、正六面体は十倍程度の大きさになった。



「・・・・・一撃で・・・オツヤン・・まさか」

リズはつぶやいた。



 そして、人を生贄にして殺す現場が皆の前に現れた。



「兄ちゃん!」

「エバ!」


 ボブとリズが駆けだす。


「こ、これは、・・・・・・・・・お前ら?」

ガリクソンが呟く。


「た、たいちょう?・・・たいちょう・・・・・ローランがやられた」



「どういうことだ!バイヤール!ロドリゴ何故ここに?病院じゃ?」


「生贄として攫われたのです。早く!」


 カタリアの言葉で、疑問を抱きながらも隊員たちのもとに駆けだすガリクソン。




「お、おいシェルターってこわれんのか?」


「儀式の邪魔をするか。死ね」



 枢機卿が攻撃魔法を放つ。

ガリクソンとボブは手で払いのけて枢機卿の攻撃魔法をかわした。


 ダメージでまともに動けないリズに攻撃魔法が!  



「ステータスオープン」



 リズの前に現出した漆黒の板に、枢機卿の攻撃魔法が当たり消失した。

       


「オツヤ   人族 28歳  LEVEL1  HP4/5  MP1 STR1

 特記: 【世界最強のステータスパネル保持】 」



「世界最強・・・」


 リズは眼前の漆黒の板に刻まれた、怨念を思わす深紅の血文字を読んだ。



 ボブとガリクソンはそれぞれ、囚われの魔族エバンゼスと熊獣人ネグセ、隊員バイヤールとロドリゴを抱え素早く離脱する。

カタリアが両手でヒールをかける。


 途中動けなくなったリズはなんと、オツヤが抱えてきた。

へっぴり腰であるが死に物狂いだ。



 ガリクソンが再び問う。


「どういうことだ!教皇!枢機卿!勇者!何をやっていた!」


「ひっ。ガリクソン!違うのじゃ!これには訳があってのう」


 教皇が言い訳を考えていると、



「ズシャ!」



 教皇の首に聖剣エクスカリバンが刺さっていた。


 勇者イヤミキザは教皇を殺した。



「キャー」「わー」「ちちうえ!」「ひゃー」


 子供たちと母親たちが逃げ惑う。



「儀式の邪魔をするか!」

枢機卿は狂気の目でにらみつける。


「おい!じじい。もうダメだろ!めんどくせえからどっかでまたやればいい!」



 枢機卿はイヤミキザに攻撃魔法を放つ。


「儀式を終わらせねば!メロディアと暮らせん!メロディアと暮らせん!邪魔をするな!」



 攻撃魔法を連射する。

「グワッ」「キャー」「ゲッ」


 ミキザは聖剣ですべてさばく。

流れ弾が子供や母親たちにあたる。


 動けない大司教の脳が攻撃魔法で貫かれた。



 ボブは救出者とカタリア、リズ、オツヤを体を張って守っている。

ガリクソンはローランの遺体を抱きしめ保護するところだった。



「メロディア?メロディアといったか枢機卿!」

ガリクソンが叫ぶ。


「メロディアは里で眠っている」

ガリクソンが言った。


「メロディアが?里?里。ぷらうだちゃん?」


 枢機卿の目に一瞬正気の光が戻った。



「ガリさん!危ない!ステータスオープン!」


「死ね!」


 と、ミキザがガリクソンの背後から聖剣エクスカリバンを振り下ろし・・



 振り下ろせなかった。



 ——世界の序列が変化した。


 床と水平に現出した巨大な漆黒の板は、暗黒の気をまき散らしながらミキザの頭上に浮かんでいた。


 切断されたミキザの両手は慣性で飛んでいく。

聖剣エクスカリバンは枢機卿の胸に刺さった。



 ブワワワワと光の輪が浮かび、血を流しながら枢機卿が飛び込む。

輪が消える前にミキザも飛び込んだ。


 

 魔獣と人間の屍がひろがる祭殿では、第一王子の泣き声が響いていた。




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