063 枢機卿の誤算
最重要儀式『恵皇の大儀 』を直前にし、枢機卿は焦った。
準備を重ねてきたというのに計画に重大な狂いが生じたのだ。
ガリクソン辺境騎士団長に依頼したギルド爆破犯の抹殺指令の後方支援としてマングラを配備したのだが、転送後ほどなく行方不明となる。
ガリクソン自体も口を閉ざした。
何があったのかを頑として語らない。
念のためランス、兜甲冑および大魔馬の魔力スキャンを行ったが直近の戦闘残渣は無かった。
「任務は遂行する」とだけ言って去っていった。
転送先周辺の見回りをさせた近衛騎士団、警備隊からも異常の報告はない。
マングラはたしかに精神面で不安定であるが、枢機卿じきじきの命令については任務放棄はしたことがない。
数日の行方不明期間を経て、マングラは、教国王城病院地下研究所内の自分の部屋に帰ってきた。
そして破壊した。
幸い、枢機卿が転移して駆けつけたのが早かったので、病院の表の顔である地上層の大きな被害は防げた。
あと数分遅れれば病院ごと倒壊した可能性があった。
マングラが破壊を目的としなかったのもある。
彼は、何かを探すように地下研究所内のあらゆるところをひっくり返しかき混ぜていった。
それだけのことで地下のすべてが破壊された。
備品、什器だけではなく柱、壁床、天井がえぐられた。
調査すればおそらく病院の建て替えが必要となる被害であろう。
研究所は人的にも、死者を伴うかなりの被害が出た。
しかし、枢機卿にとっては、そんなものはどうでもよかった。
病院地下最下層に、枢機卿が厳重に監禁していた『恵皇の大儀 』のための『理知の贄 』が、儀式を前に死んでしまったのだ。
魔道結界で隔離していたが正気をなくしたマングラの腕力には耐えられなかった。
HPを削って束縛していたので結界が破れると同時に反動で死んだようだ。
今回準備していたA級相当の『理知の贄 』を至急確保する必要がある。
『恵皇の大儀 』は延期できない。
失敗は許されない。




