006 いざギルド登録 ~ではステータスを出してください
「で、あなたはいったい何の御用かしら?」
大机の上で正座したままボブに抱き着かれ震えているオツヤに、冷たい目をしたギルド職員さんがつまらなそうに尋ねてきました。
「とうりょうくっ、いえ登録に来ました!」
机の上で正座して何かの反省会にしか見えない。
「あなたが?冒険者っていうのは誰でもなれるのだけど誰でも生き残れるものではないのよ?わかってらっしゃる?」
「カーちゃん!アニキを登録してやってくれよ。転生してきたんだ。冒険者しかないだろ。てんぷら的にさ」
「誰があなたのお母さんですか!カタリアさんと呼びなさい。え、転生者なんですか。それは非常に珍しい。本当なんですか?」
「は、はい。ステートピアというところから来たばかりです」
「聞いたことないですね。とにかく、登録は資格制ではありません。罪人でなく望むものはできますよ。その後の命の保証はしませんが」
「は、はい。します(怖いこと言うけどやるしかないよね)」
「では 出してください」
「では???出す?」
「ステータスパネルですよ!ああ、転生者ですから、ご存じないですか。すべてはステータスパネルで確認するのがこの教国の法となっております。決闘だけでなくギルド証も関所をとおるのも物を買うも売るも初対面のあいさつもすべてステータスパネルを開示してから行うのです」
「・・・・・・・・マジですか・・。(やばいすごーく恥ずかしいですけど僕のステータスみられるの。神様のバカバカ!)」
「はい。お願いします」(ちょっとイラっとした顔)
「ほんとに出すんですか・・。ここで?」
「早くしてください。別にあなたのステータスが高いだなんて思ってないですし、低くても登録はできます。はい」
「アニキ!ガツッとお願いします」
「分かりました。見ても笑わないでくださいね」
オツヤは言った。
「ステータスオープン」
それはステータスパネルと呼ぶにはあまりにも禍々しすぎた。
オツヤの眼前に巨大な漆黒の板が現出した。
重厚感のある金属質の板からドス黒い気が放たれ、周囲を暗黒界に変容させていく。
ギルドの扉より大きなそれは、ギルドロビーの天井付近から床近くに収まりはしたが、妨げる存在を許さなかった。
ジェネラルトレントの巨大な幹の机は、音もなく両断されていた。
漆黒面に爪で何度も引掻き切刻んだような怨念を思わす深紅の血文字で
「オツヤ 人族 28歳 LEVEL1 HP 1/5 MP 1/1 STR 1」
と大きく読める。
下のほうに
「特記: 【世界最強のステータスパネル保持】 」
―― 世界の序列が変化した。
冒険者たちは何が起こったのか全く理解できず、その場でただ唖然としていた。
「ここれは、貴方は、貴方様は!」
「ギョエー!アニキっこれなんだなんだべ。公園にいた魔王が追いかけてきたか!」
「ヒーー みんな。見ないで!恥ずかしいステータスが!死ぬる!!
早く早く登録してください!」
その時、同じ建物奥、ギルド長室。
悪い笑いを浮かべながらウイスキーを吞んでいた二人のむさい男。
「なななんななんだ!この暗黒の気は!!魔王が攻めてきたのか!」
「おい、こここれ。卵が爆龍の卵が反応してるヨ!やはいヨ!!!!」
赤マダラ模様が動き出し、卵が激しく振動する。
「あ、もうだめなやつ」
ビカッ!
教国歴1438年7月7日16時25分ごろ。
教国ギルド本部で原因不明の巨大な爆発が発生。
ギルドはギルドマスターゴリアテをはじめ、約30人の冒険者、職員ごと崩壊した。
爆心部は瓦礫の広がり方向から、ギルドマスター室の可能性が高いとされている。
不思議なことにロビーの一部、大机付近は扉一枚分の未破壊箇所があり、調査班は首を傾げている。
絶対壊れない机として有名であったジェネラルトレントの巨大な幹の机が、真っ二つになって発見されたことが爆発の強さを物語る。
机はまるで達人が鋭利な刃物で両断したような完璧な切断面であり、爆破でこのような現象が起こる前例はなく、調査班が頭を悩ませている。
今のところ生存者は確認されていない。
死体の損傷具合が大きく、個人の特定に至らない。
ただ、爆発直後、二人の人らしきものを抱えた獣人が、現場から走り去るのが目撃された。
当局は重要参考人として、捜査を開始した。
★【全話執筆完了】完結まで単行本約1巻分【毎日更新】




