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052 悲劇8  スラム編 終幕 



 間一髪のオツヤの復活で、崩落した広間での死者、重傷者はいなかった。


 使徒たちは手分けをして、速やかに被害の把握と一次救助に動く。



 カタリアはマナポーションを飲み、無理やりヒーリングを再開する。

瀕死のオサジイに。


 オサジイは奥の台所であった場所で、瓦礫の下から見つかった。


 オサジイの傍らでは、ケンボーが泣きわめいていた。

ケンボーはオサジイに守られて、無事であった。



「ケ、、ンボーーよ、かつ、た」



 オサジイは声を振り絞る。吐血が広がる。



「オサジイ・・・・」



 ペトロンがシャツをめくり上げ、袋のようにした格好で立っていた。


 シャツのくぼみの中の、何か赤い肉片をかき集めたものがこぼれないように、大切に抱いて。



「コンポーが壊れちゃった。集めても・・ぐしゃぐしゃになって・・・。

 オサジイ・・・・。オサジイもこわれ・・・・」


「ペトロン・・あとを・・・・・・・・・・・・たのむ」






 駆け付けたリズとトマスンらも加わり、里の救助作業はさほどかからず終わった。


 誰もほぼ無言で、必要な単語だけしか発することはなかった。


 半狂乱であったペトロンをカタリアは優しく抱きしめると、静かな声で歌いだした。





ときのいさかい いがみあい

こころささくれ 消えた愛

あきらめの毎日に さよならを

ただ愛されて だきしめられていた

あのぬくもりを 思い出して


信じることに つかれちゃうのは

あなたが まっすぐ 生きてきたから

数字のオリは ふりはらって

わたしは 心のままに



もどします もどします



心を1にもどします



――はじまりの1





 使徒も、住民たちも歌いだした。


悲しくやさしい歌が、里に流れる。



 高台に上がり、コンポーとオサジイの埋葬と祈りを、皆で終わらせる。

犠牲者は二人であった。


 住民は皆そろっている。

歩けない老人たちも祈りに参加したいと、使徒とボブが手分けをして高台に運んできたのだ。


 ペトロンはオサジイの言葉に従い、里に残り、新たな代表となることにした。


「おれなんかでいいのか」とペトロンがひとり呟くと、里の住民たちは「お前しかいないよ」と肯定した。

カタリアは、オツヤとボブ、使徒たちとともに、全面的な援助の継続をペトロンと住民たちに約束した。


 リズは終始無言で見守っていた。

もう崩落の危険がないことは、既にトマスンが皆に伝えている。



 プラウダは、ガリクソンに抱かれている。


 プラウダの正気は回復しなかった。

目の前で手を振っても触っても、何の反応もない。


 反射運動は、膝も瞬きも確認され、目も開いている。

吸い飲みを口にあて、ゆっくり白湯を流すと、嚥下運動に問題はなかった。


 ただ、意識の反応がないのだ。

唯一、コンポーの作った歌にだけ、涙で反応する。


 プラウダの世話は、これまでも子どもたちや介護の必要な老人たちの世話をしてきた女性住民が申し出た。

ガリクソンは、心からの謝意を示した。



「俺は、正直迷っている。何が正しくて、何が間違ってるのか。

 でも、俺は軍人であることを捨てることはできない。たとえ今回の悲劇の原因が、教国にあったとしても。


 俺は守れなかった。だから、戦い続ける。


 オツヤくん。俺はここを去る。次に外で出会ったときは敵となるだろう。

 だが、俺は戦い続けることしかできない男だ。


本気で殺す気できてくれ、俺もそうする。


 今日のことは枢機卿には言わない、いや言えない。では、さらばだ」



 この言葉は、怖いけど優しいガリさんの言葉なのか。

教国騎士団・辺境騎士団長ガリクソンの言葉だったのか、誰にもわからなかった。


彼は去っていった。



リズは、いつの間にか姿を消していた。


ペトロン以外の「救世の暗黒神」一行は、しばらく住民のケアをしてから、拠点に戻った。



 誰かが歌っているのだろう。

悲しくやさしい歌が、里に流れていた。





わたしは 心のままに


もどします もどします


心を1にもどします





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