044 スラム その5 ~STRは99よ~
崩落現場では、まず土地基盤に知識がある使徒トマスンが検証する。
「これ、やばいですね。
崩落してるのはこの五棟のあたりだけですけど、ひび入ってるのはどこまでかもわかりません。
そもそも土地の地盤が緩いんです。本来、家を建てるところじゃない」
「ふむ、だからこそ、この土地が、権力者に見捨てられていたということでもあるな」
ピンクの痴女が施政者のようなまじめな発言をしたので、みな驚いた。
「おしゃ! とにかくまずは、瓦礫を撤去して整えるか。
できることをまずやろう!」
白い大きな犬獣人の使徒ワンチャンが、明るく言った。
「なんかたいへんだべな。でも力仕事はまかせて!」
「ボブタン様。力を入れすぎずに丁寧にお願いします。
当たり所悪いと別の家も崩落するかもしれません」
「え? わ、わかっただ。ちゃんと指示してね、トマスン」
「リズもやるわよ!」
「リズさん、STR(筋力)はいくつなんすか?」
「あ、9999よ」
「ヘ?」
「99よ。99すごいでしょう!」
「女性としては立派なものですね!
私が236、ワンチャンが375で、ボブタンさんは600オーバーです。
我々が石壁や岩石塊を担当しますから、リズさんは破片とか木材をお願いします」
「えーーわたしちょっと細かいの苦手なんだよね。
全然大丈夫だから大きいのやらせて♡」
トマスンはセクシーハートビームに負けて「はい」と答えた。
「ほらみて♡ ほい!」
「へ?」
「嘘っ?」
リズは家より大きい一番巨大な岩石塊を、ひょいともちあげた。
「はいボブリン パス!」
隣に立っていたボブに手渡しする。
「んげげっげ、よ、余裕だだべよ」
どうにか持てた。
ギリギリのところで怪力守護者の面子は保たれた。
トマスンの的確な指示と、リズとボブの活躍で作業は短時間で終わった。
ボブは敗者の顔で元気がないが。
「あ、ちょっとやばいかも。どうしようかな」
「どうしましたリズさん」
「いやーね。わたしの顔知ってるのが来たみたいなの。2人も。
ちょっと今あいたくないな・・。
しかも、やりあっちゃったら全部こわれちゃうかも・・。
あ、トマトンちゃん。わたしにできるだけ細かく地盤の構造と状態を教えてくれない?」
「え、できますけど、どうするんですか?」
トマトンちゃん呼ばわりはスルーするトマスン。
「恋の魔法!」
デリバリーバッグから、魔法少女の玩具をだしてポージング。
「は?」
「もう、わかるでしょ! こっちにきて早く教えて!
もっと近く。チ カ ク ♡」
使徒の中で最も堅物なトマスンは、顔を真っ赤にしながらリズに近づき、説明を始めた。
ボブは取り残されてやることがなく、帰ろうとしたのだが、カタリア班の使徒がちょうど呼びに来た。
「ボブタン様。カタリア様が巡回で足が疲れて動けなくなってしまって、我々がおぶろうとしても『ボブじゃなきゃ嫌!』って拒否されてまして、はやくお願いします」
「うん! いく!」
ボブは気を取り直して、カタリアを迎えに行った。




