045 悲劇1
ときのいさかい いがみあい
こころささくれ 消えた愛
墓参りを終え、オサジイの家に戻る途中、ガリさんとプラウダは歌声を聞いた。
「コンポーの声ね。すてきなうた」
「ああ、いいうただな。少し聞いていこうか」
あきらめの毎日に さよならを
ただ愛されて だきしめられていた
あのぬくもりを 思い出して
信じることに つかれちゃうのは
あなたが まっすぐ 生きてきたから
「最後まできいていきたいが、時間がない。オサジイに挨拶しないとな」
「うん。わかった。わたしはここできいてていい?
わたしも覚えて、こんどガリがきたとき歌ってあげる」
「ああ、たのしみだ。ちゃんと、ご飯食べるんだぞ。
なにかいるものがあったらオサジイに手紙をあずけてくれ。買ってきてやるから」
「わかった。いつもありがと。またね」
「ああ、またな」
目じりに少し浮かんだ涙を、節くれだった太い指で拭きながら、ガリさんは歩く。
ガリさんがオサジイの家にもどると、班に分かれていたメンバーも帰ってきたようで、にぎやかになっていた。
「あ、ガリさんおかえりなさい!」
声を出したオサジイの近くに、おそらく安国心の幹部、三人がいる。
オツヤくんと、黒いスーツの女性、熊獣人の女の子。
熊獣人は珍し、あ?
熊獣人と人間の男と女。
――ドーーーーーーーーーーーーーーーン!
「てめえらか!」
急に怒声を上げた大男は、ガリさんではなかった。
恐ろしい顔をしながらも愛想のよかったガリさんではなかった。
教国騎士団・辺境騎士団長ガリクソン
幾多の教国の敵を屠り、魔獣はおろか魔族も彼の姿を見ると逃げ出すという圧倒的強者、辺境騎士団長ガリクソン。
戦鬼がそこにいた!
トレードマークの全身鎧とランスをつけてなかろうが、彼の本質は武具ではない。
凝縮された存在の重圧が、その場を支配した。
「ヒッ!」
流石、キュウビのもとで死線をくぐってきた使徒たちは、驚愕しながらもオツヤたち三人とガリクソンの間に割って入る。
「退けっ!」
さして気合を入れたでもない一声。
使徒たちは吹っ飛ばされる。
家が直下型地震のように揺れた。
「辺境騎士団 団長ガリクソン?」
カタリアがつぶやく。
彼女すら、兜を外した顔は拝んだことがなかったのだ。
しかし、このような化け物は他に心当たりがない。
ボブは気丈ににらみ返しているが、尻尾と耳、体毛が本能的恐怖で縮こまって震えている。
オツヤは、吹っ飛んできた使徒に吹っ飛ばされた。
使徒の下敷きで、気絶した。
「教国の敵はゆるさぬ。何の恨みもないがこれもさだめ。死ね」
ゆらりゆらりとした闘気が、全身から湧き出してる。
完璧な死をもたらす死神が、鎌をもたげた。




