042 スラム その3 ~ガリさん~
「なんだか今日はずいぶんと騒がしいな? ジイ」
「ギョワッ!」
「あぁ、ガリク、いえガリさん。ようこそいらっしゃいました」
オサジイにガリさんと呼ばれ、挨拶もなく慣れた様子でオサジイの家に上がり込んだのは、身の丈2mもある無骨な筋肉男だった。
笑ってはいるが、全身の筋肉に生まれた時からついていたのではないかと思わせるほど無数の傷がなじんでいる迫力ある風貌は、戦闘経験豊富な使徒ですら、ギョっと作業の手を止めた。
我らが最強主人公は、「ギョワッ!」と奇声を上げ、ポーズを変えずに3cm空中浮遊して見せた。
器用なオツヤであった。
「お客さんか? 六人も。にしても随分たくさんの荷物だな。
こんな何にもない里に何の用だい?」
柔らかく話しかけているつもりのようで口は笑っているが、むしろ怖さが増幅していることに、筋肉男は気づいていない。
使徒たちは、この場に残った者の中で代表を務めるべきオツヤに目線をやる。
オツヤは不器用なくせに器用に五人の使徒の目線をかわしたが、筋肉男はリーダーを察し歩み寄る。
「あんちゃんがリーダーかい。よろしくな。
俺はガリだ。ガリさんでいいよ。あんたは?」
気さくににっこり笑い、無骨で大きな手を差し出す。
顔面恐怖値が20%アップしたことに、本人は気づいていない。
「は、はひーーー。オツヤです」
反射的に手を差し出し、握手に応じた形となった。
「ギャー!」
「おいおいにーちゃん。すまんすまん。大丈夫か。
どうも加減が苦手で!」
「オツヤ様!」
使徒たちとオサジイが慌てて駆け寄る。
「ダ、ダーイジョーブれす。たぶん」
「おお、流石不死身のオツヤ様!」
「え、あんた不死身なのか! すげえな。何やってるんだ。
ちょうどいい仕事を紹介してやろうか?
みんな死にすぎて人手不足なんだよ」
「ガリさん。オツヤ様は暗黒神様の分身、大切なお方なのです。勧誘はおやめください」
なりたて暗黒神信者オサジイが止めに入る。
「う、安国心って聞いたことないけど、国を案じてくれてる立派な奴なんだな。
すまんすまん。俺も似たようなもんだ。
国を案ずる仲間だ! オツヤくんどうだ!」
「はあ、あああーい。勧誘をやめてくれてありがとうございます」
新興宗教の中心人物の癖に、勧誘が苦手なオツヤであった。
「この物資は暗黒神さまからいただいたものです。今、里中に配布しております。
あと、病人、老人など動けない者のところには、巫女様方にお回りいただいております。
また西斜面の崩壊がありまして、そちらの復旧のほうにもご助力いただいております」
オサジイ、ナイスアシスト。
「おお。安国心ってなんかすげえんだな。俺も手伝うぜ!」
「あぁ、いえいえ。ガリさん。人は足りております。
せっかくお忙しい中おこしくださったので、どうぞ、メロディアに挨拶に行ってやってください」
「そうか、オサジイ、すまんな。この饅頭、食ってくれや。
今日はアッチはなしだ。俺、ボーナスつかっちまってよ。追加入れれなかったわ」
「ガリさん。滅相もない。ガリさんがいるから今まで何とかなってきたんです」
「泣くなよ! ジイ! フケるぞ!」
オサジイは外で遊んでいたプラウダを呼び、プラウダはガリさんと、部屋を出てどこかに行った。
プラウダはガリさんに、随分なついているようだった。




