036 割り振り上手の枢機卿さん
「おい、マングラ」
「じいじ、なんだ」
「お前は魔獣はもういいから、1つ頼みがある」
「おれはいい奴だからいいぞ! わかった」
「まだ何もいってないわい」
プラウディオ枢機卿は、マングラをガリクソン辺境騎士団長の援護にあてることにした。
未知の敵には、120%の武力であたりたい。
マングラの魔獣確保の効率が、悪すぎるというのももちろんある。
ガリクソンの巨大な気は、王都からさほど離れていない場所で捕捉した。
少し離れたところに、マングラを転移させる。
そして、機動力があり視力も尋常でない鳥人ククロビンには、王都周辺上空の徹底的な監視を依頼した。
「クク、退屈な仕事だな」と捨て台詞を吐いたが、彼は基本まじめだ。
勇者イヤ ミキザは好きに遊ばせている。
またハレム宮殿か、湾岸の海水浴場で女と遊んでいるのだろう。
シェルターの儀式で、奴の聖気がふんだんに必要になる可能性が高いからだ。
今回捕獲した高位モンスターには、HPが1に調整できず、3桁も残った特殊個体がいる。
「やれやれ。とりあえずはやつらに任せて、一息じゃ」
プラウディオ枢機卿は自室に戻り、自分で淹れた濃い珈琲を一口飲むと力を抜いた。
「いまだ、メローニの淹れた珈琲にはかなわんか」
「恵みの儀のあとには、思い出すわい」
冷徹と言われるプラウディオにも、家族はいた。
両親は不明で、みなしごであったプラウディオは、闘技場で実力だけで這い上がってきた。
闘いの日々の中、ステータスこそ低かったが、優しく芯のある女と出会い愛しあった。
そして、子を授かった。
しかし妻は出産後に体調を崩す。
プラウディオはヒーリングを幾度と施すも、妻メローニは死去。赤子が残された。
赤子は妻に似た優しい娘に育ったが、ステータスの低さも妻と同じだった。
このころには地下競技場は閑散とし、時代は魔獣のとどめを刺す「不正ステータスアップ」に完全に移行していた。
大魔導士としてすでに高い地位を持ったプラウディオは、教皇の許しを得て『恵みの儀』に娘を参加させるが、母譲りの優しさと芯の強さが完全にあだとなる。
娘は教皇の命にそむき、かたくなに瀕死の魔獣にとどめを刺さなかった。
プラウディオの懇願で死罪こそ免れたが、娘は齢15にして身分をはく奪され、北部魔獣地域に一人追放された。
死罪に等しい処遇であったが、当時のプラウディオの権力は、まだそれを止めるに至らなかった。
プラウディオは誓う。
「俺は、この国の権力を奪う」と。
そして20年以上が経過。
ここに、ユナイテッドステータス教国を裏から操る冷酷無比な大魔導士プラウディオ枢機卿がいる。
今や教皇も、プラウディオ枢機卿と勇者イヤ ミキザに頭が上がらない。




