020 凶刃
「さあ! オツヤ様 信者となられた皆にひとことお願いします!」
「ちょっと! まってーーー!!! ストッーーープ!!!」
オツヤがカタリアの口を塞ぎに行く。
割れんばかりの歓声の中。彼の動きに気づく者はいなかった。
カタリアの心臓を一突きにする位置に、正確に投げられた大型ナイフ。
――グサ!
「オツヤ様・・・!?」
偶然にもナイフとカタリアの心臓を結ぶ線上に入ったオツヤの腹には、大型ナイフが深々と半ば以上刺さっていた。
「これ毒塗ってあるべ。抜きたくないけど抜くしかない!」
「オツヤ様!!!!!!!!!!!!!!!」
ボブはオツヤの腹に刺さったナイフを抜く。
「カーちゃん傷を応急処置して! おらはあいつをおう!」
泣きながらもカタリアは気を取り直し、収納から取り出した医療器具で止血し、同時に生活魔法のクリーンとヒールを繰り返しかけていく。
現場から逃げ出したのは、臨時の小隊長をつとめた若い隊員だった。
「くそ! 俺としたことがしくじった!
だが男のほうはやったぞ。ハイドラ毒のナイフだ。
勇者だって10分もせずに殺せる猛毒だからな。もう死んでる」
「おい、ものども! 付いてきてるか?」
「頭領!」
五名の警備隊員が付いてきていた。全員獣人である。
「あとのやつらは変になっちまって、ボンクラどもといっしょに泣いてます。
あれはだめですぜ。つかいもんにならねえ」
「あれは洗脳スキルか? あの赤いパネルの女。
レベル66で、しかもなんだあの赤黒いステータスパネルは。
途中、俺ですら聞き入ってしまったからな。おめえら大丈夫か?」
変化をといたキュウビは、手下たちの安否を確認した。
ステータスパネルを開かなかった警備兵、臨時小隊参加者は、紛れ込んだ裏ギルド『九尾の狐』のメンバーだった。
「は、はい。何とか。もうちょっと続いたらやばかったです」
「いいか、ターゲットはあの女だ。ギルドで爆発したのは爆龍の卵だ。
あれを起爆させられるのは。俺と同程度以上のレベルが必要だ。そんなやつはそうそういねえ」
「たぶんあの女は、あのよく分からない悍ましい黒い気を使えるだろう。
あれを出される前に体制を整えて始末するぞ!
至近距離だとどれだけ力があるかわからねえ。
ボンクラ警備隊という肉の壁があるうちに始末してえ」




