014 われら教国警備隊
教国首都のはなれに流れるステート川は、狭窄部でも幅100mを超える大河である。
上流の山間部から切り出された木材をはじめ、海につながる下流からの水産物、船舶による物流の重要拠点となっていた。
川魚、小エビ等の汽水域特有の水産資源も豊富で、川沿いには水産業者、木材卸業者など、一次産業労働者が多く居住している。
揃いの軽鎧に制帽着用、帯剣という物々しいいでたちの集団が、川辺で探索をしていた。
隊長らしき人物が指で指示を出し、隊員たちは葦をかき分け進んでいる。
「目撃者の情報によると、このあたりのはずだ」
彼ら教国警備隊は、町における犯罪、住民間のトラブル対応、治安維持のための部隊。いわゆる警察的な役割を担っている。
すこし裕福な平民や下級貴族の出身者が多い。
士気はさほど高くないが、近年の近衛騎士団に比べればまともな働きをしてると人々は思っている。
魔獣との戦闘が多い辺境騎士団に戦闘力の高い人材が流れているため、強さでは警備隊は数段劣るのだが、数は多い。
「おい! 川の中を見逃すなよ。
『川に入って魚を取っている熊っぽい獣人を見た』との目撃だ」
「隊長! 支給品が長靴じゃないんですよ。濡れちゃってとても川の中まで探せません」
「ばかもん。見逃したら降格処分もあるぞ。なんせ枢機卿様の緊急命令だからな!
とにかく女の熊獣人と人間の男と女。徹底的に探し出せ!」
―― そのとき、世界の序列が変化した。
「なななんなんだ! 地震か! 嵐か! 洪水がくるのか!」
「ぎゃーーー!!!」
「隊長、とにかく足場のよいところまで退避しましょう!」
「撤退! 撤退! 撤退!」
一瞬にして、晴天だった空は暗灰色の混沌に支配された。
だがそれよりも、言い表しようのない人の魂の奥底を揺さぶり浸食するような気配が、世界を覆っている。
恐慌状態に陥った警備隊たちは、撤退命令に従ったというより本能のままに、土手の上で震えて身を寄せ合うのだった。




