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ハートブレイカー  作者: 諏訪貴信


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12大科学士

「独房の中にもソウマがいた。」


その事実は基地全体を混乱に陥れた。


誰が本物なのか。


誰が偽物なのか。


もはや誰にも分からない。


その時だった。


宇宙空間に巨大な転移ゲートが出現する。


直径三千キロ。


銀色の輪が地球軌道に展開された。


アリスの顔色が変わる。


「まさか……。」


「知っているのか?」


レイが尋ねる。


「伝説よ。」


「感情捕食文明が最も恐れた存在。」


「12大科学士。」


司令室が静まり返る。


それは数百年どころではない。


数万年前から銀河に伝わる伝説だった。


一人で文明を創る者。


一人で恒星を改造する者。


一人で宇宙法則を書き換える者。


科学者でありながら神話の英雄。


彼らは銀河史上最高の頭脳集団だった。


転移ゲートから最初の人物が現れる。


白衣。


杖。


老人。


「第一科学士。」


「アーク・フォン・ヘリオス。」


彼が杖を軽く突く。


すると地球上空のネメシスの重力場が消滅した。


レイが絶句する。


「今、何をした?」


老人は平然と答えた。


「重力定数を書き換えただけだ。」


誰も理解できなかった。


続いて二人目。


黒いドレスの女性。


「第二科学士。」


「リディア・クロックワーク。」


彼女が指を鳴らす。


すると停止していた監視映像が復元される。


死者の視点まで。


時間そのものを観測していた。


三人目。


巨大な機械義手を持つ男。


「第三科学士。」


「ガウス・ヴァルハラ。」


四人目。


五人目。


六人目。


次々と現れる。


そして最後。


十二人目が現れた瞬間。


アリスが息を呑んだ。


「ありえない……。」


その人物は若い男だった。


二十代半ば。


黒髪。


鋭い瞳。


ソウマと瓜二つだった。


「紹介しよう。」


第一科学士アークが言う。


「第十二科学士。」


「コードネーム。」


『オメガ』


沈黙。


オメガは静かにソウマを見る。


「久しぶりだ。」


「被験体S。」


ソウマが固まる。


「俺を知っているのか。」


「知っている。」


オメガは淡々と言った。


「なぜなら。」


「君を設計したのは私だからだ。」


司令室に衝撃が走る。


「設計……?」


「そうだ。」


オメガは一枚の映像を表示する。


そこには十三人の研究者が映っていた。


十二大科学士。


そしてもう一人。


顔は見えない。


記録だけが残っている。


【第十三科学士】


その文字を見た瞬間。


全員の端末が暴走する。


アリスが青ざめる。


「そんなはずない。」


「第十三科学士は存在しない。」


アークも表情を失っていた。


「記録では抹消されたはずだ。」


その瞬間。


基地の照明が消える。


暗闇の中。


誰かの声が響く。


聞き覚えのない声。


しかし不思議と全員が知っている気がした。


「私を忘れたか。」


「我が弟子たちよ。」


十二大科学士の顔色が一斉に変わる。


銀河最強の頭脳たちが。


恐怖していた。


そして暗闇の中に現れる。


白い仮面。


黒いローブ。


存在するはずのない人物。


第十三科学士。


銀河史から消された男。


そしてネメシスを生み出した真の創造主。


彼の名は――


ドクター・ハートブレイカー。

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