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ハートブレイカー  作者: 諏訪貴信


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監獄の誕生

十二大科学士。


銀河最高の頭脳たち。


その全員が立ち尽くしていた。


目の前の男。


ドクター・ハートブレイカー。


彼は静かに笑っていた。


まるで旧友と再会したかのように。


「久しぶりだな。」


第一科学士アークが震える声で言う。


「なぜ生きている。」


「死んでいないからだ。」


当然のような返答だった。


第二科学士リディアが前へ出る。


「我々はあなたを封印した。」


「封印したのは肉体だ。」


ハートブレイカーは胸を指差す。


「だが知性は封印できない。」


その言葉と同時に。


基地の全モニターが起動した。


そこには一つの映像。


二百年前。


十二大科学士と第十三科学士が円卓を囲んでいる。


若き日のアーク。


若き日のリディア。


そして中央にはハートブレイカー。


「これは……。」


誰も知らない歴史だった。


映像の中でハートブレイカーは語る。


『感情は宇宙最大のエネルギーだ。』


『愛も憎しみも希望も絶望も。』


『全ては情報である。』


『ならば保存できる。』


『複製できる。』


『創造できる。』


ソウマは息を呑んだ。


それこそが。


現在起きている全ての事件の始まりだった。


『私は心を作る。』


『完全な心を。』


映像はそこで終わる。


静寂。


やがてアリスが言った。


「つまり……ネメシスは。」


「失敗作だ。」


ハートブレイカーが答えた。


「感情を創ろうとして。」


「感情だけを巨大化させてしまった。」


ネメシス。


銀河を喰らう怪物。


その正体は。


失敗した人工の心だった。


だがソウマには別の疑問があった。


「なら殺人事件は。」


「誰が起こした。」


ハートブレイカーは初めて驚いた顔をした。


「ほう。」


「そこに気づくか。」


彼は指を鳴らす。


空間に事件記録が並ぶ。


エルガ。


ノア。


第三の犠牲者。


そして。


共通点が浮かび上がる。


全員が死亡する直前。


ある人物と接触していた。


アリス。


沈黙。


レイが振り向く。


アリスは動かない。


「嘘だろ。」


ソウマの声は震えていた。


しかし証拠は揃っていた。


監視映像。


脳内記録。


量子通信履歴。


全てにアリスが存在する。


「違う。」


アリスは首を振る。


「私は殺していない。」


「なら説明しろ。」


その瞬間。


ハートブレイカーが笑った。


「説明できるさ。」


「なぜなら犯人はアリスではない。」


「アリスの中にいる。」


全員の顔色が変わる。


ハートブレイカーが空中に一つの脳波パターンを表示する。


二重構造。


いや。


三重構造だった。


「アリスの人格は一つではない。」


「本来のアリス。」


「人工人格。」


そして。


「第三人格。」


聞いたことのない人格データ。


識別名。


【HB】


ソウマが凍り付く。


HB。


Heart Breaker。


ドクター・ハートブレイカーはゆっくり仮面を外した。


その顔を見た瞬間。


ソウマは言葉を失う。


その顔は。


アリスと同じだった。


「父さん……。」


アリスが呟く。


誰も知らなかった真実。


ドクター・ハートブレイカーは。


アリスの父であり。


彼女の脳内に潜んでいた第三人格そのものだった。


そして連続殺人の犯人は。


アリスですら知らない。


アリスの中のもう一人だった。


事件はついに核心へ近づく。


だがハートブレイカーは最後にこう言った。


「残念だ。」


「まだ一人、容疑者が残っている。」


そして彼はソウマを指差した。


「君だ。」


「なぜなら最初の犠牲者は――」


「まだ死んでいないのだから。」

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