すべてはゼロ
ネメシスとの戦いが始まる直前。
奇妙な事件が発生した。
反乱軍の司令室。
厳重な警備の中で、一人の隊員が死亡した。
名はエルガ。
反乱軍創設メンバーの一人だった。
死因は不明。
外傷なし。
毒物反応なし。
脳活動も正常なまま停止していた。
まるで突然、生きることをやめたようだった。
さらに不可解なのは監視記録だった。
死亡推定時刻の前後三十分。
部屋に出入りした者は誰もいない。
完全な密室。
「殺人……なのか?」
ソウマは映像を見つめる。
アリスも眉をひそめる。
「でも犯人が存在しない。」
そして遺体のそばには一文字だけ残されていた。
"Z"
ゼロの犯行。
誰もがそう考えた。
だがゼロ本人は否定した。
「私ではない。」
「信用できるか。」
レイが睨む。
しかしゼロは静かだった。
「もし私なら隠さない。」
「消去対象は消すだけだ。」
確かにその通りだった。
ゼロはこれまで回りくどい真似をしたことがない。
捜査が始まった。
ソウマは現場を再調査する。
すると奇妙な事実が見つかる。
エルガの端末に残された最後の記録。
そこには一つの名前があった。
《プロジェクト・ゼロ》
「待て。」
ソウマは息を止める。
「プロジェクト・ゼロはゼロを作った計画じゃないのか?」
アリスが首を振る。
「違う。」
「それは私たちが思っている計画名じゃない。」
「どういう意味だ?」
アリスは古いデータを表示した。
数百年前の記録。
感情捕食文明の極秘文書。
そこに書かれていた内容は衝撃だった。
『ゼロは個体名ではない』
『最初の被験者の識別番号である』
司令室が静まり返る。
「最初の……被験者?」
つまり現在のゼロは一号機に過ぎない。
二号。
三号。
四号。
存在する可能性があった。
「まさか。」
レイが呟く。
その瞬間。
警報が鳴り響いた。
第二の死体が発見された。
しかも場所は反乱軍本部の中央。
厳重警備区域。
誰も侵入できない場所。
現場へ駆けつけたソウマは凍り付く。
床に倒れていたのは。
別宇宙のソウマだった。
しかしおかしい。
死んでいるはずの彼が、ゆっくりと顔を上げた。
「遅かったな。」
冷たい声。
見覚えのない笑み。
その瞳は赤く染まっていた。
ゼロと同じ色。
「君は誰だ。」
ソウマが問う。
男は笑う。
「ゼロではない。」
「ネメシスでもない。」
「私は最初の失敗作。」
「識別番号――ゼロ・マイナスワン。」
その瞬間、司令室の全モニターがブラックアウトした。
誰も知らなかった。
ゼロ誕生以前に作られた存在。
記録から完全に抹消された存在。
そしてエルガを殺した真犯人が、
ついに姿を現した。
だが最大の謎はまだ残っていた。
なぜ死んだはずの別宇宙のソウマの身体に、
ゼロ・マイナスワンが宿っているのか。
そして本当の別宇宙のソウマは、
今どこにいるのか――。




