壊れたら作り直せばいい
東京上空。
漆黒の巨人ゼロが立っていた。
その姿だけで街の灯りが消えていく。
人々の感情が吸い上げられ、夜空へ流れていた。
希望も。
愛も。
夢も。
すべてが黒い光となって消えていく。
「間に合ったみたいね。」
アリスの船が降下する。
巨大なハッチが開く。
そこから現れたのは異星の戦士たちだった。
感情捕食文明によって故郷を滅ぼされた生存者たち。
彼らの目には長い戦いの歴史が刻まれていた。
その先頭に立つ男。
別宇宙のソウマ。
彼は静かに現在のソウマへ近づく。
「信じられないだろうが、俺も君だ。」
「別の可能性から来た。」
ソウマは警戒する。
「なぜ協力する?」
別宇宙のソウマは苦笑した。
「俺の宇宙は負けたからだ。」
その一言で空気が凍った。
「ゼロに?」
レイが尋ねる。
「いや。」
別宇宙のソウマは首を振る。
「もっと上の存在に。」
アリスが巨大な星図を映し出す。
銀河の中心。
そこには黒い渦があった。
「感情捕食文明の本体。」
「名前は《ネメシス》。」
ゼロはただの兵器だった。
地球侵略のために送られた先遣隊。
本当の敵はまだ姿を現していない。
その瞬間だった。
別宇宙のソウマが突然苦しみ始める。
胸を押さえ、膝をつく。
「どうした!?」
ソウマが駆け寄る。
別宇宙のソウマの体から黒い粒子が溢れ出した。
アリスの顔色が変わる。
「まさか……。」
「追跡コード!」
ゼロが笑った。
初めて。
心のないはずの存在が。
「やっと見つけた。」
別宇宙のソウマは罠だった。
本人も知らないまま、ネメシスの位置情報を体内に埋め込まれていたのだ。
反乱軍は敵を連れてきてしまった。
夜空が裂ける。
東京の上空に巨大な亀裂が広がる。
雲が渦を巻く。
月が黒く染まる。
裂け目の向こうから現れたものを見て、人類は言葉を失った。
星だった。
いや。
星ではない。
生きている。
無数の目を持つ巨大な生命体。
惑星そのものが生命だった。
《ネメシス》。
感情を喰らう銀河生命。
何千もの文明を滅ぼしてきた存在。
「感情は病だ。」
宇宙全体に響く声。
「ゆえに消去する。」
その声だけで世界中の人々が倒れていく。
ハートファイアの力を持つレイでさえ膝をついた。
だがその時。
ゼロの様子がおかしくなる。
ネメシスの命令。
「地球を消去せよ。」
しかしゼロは動かない。
赤い瞳が揺れていた。
わずかな迷い。
矛盾。
感情。
地球で過ごした時間。
出会った人々。
怒り。
悲しみ。
憧れ。
彼自身が否定していたもの。
それらがゼロの中で芽生え始めていた。
「命令を実行しろ。」
ネメシスが再び命じる。
長い沈黙。
そしてゼロは空を見上げて言った。
「断る。」
アリスもソウマも凍りつく。
ネメシスの使者だったはずのゼロが反逆したのだ。
ネメシスの巨大な瞳が開く。
銀河を震わせる怒り。
「欠陥品。」
ゼロはゆっくりと振り返る。
その視線の先にはソウマたちがいた。
「人類。」
「私はお前たちを理解できなかった。」
「だが一つだけ分かった。」
黒い巨人の体から光が漏れ始める。
「心は弱さではない。」
ゼロは拳を握る。
「心は、進化だ。」
その瞬間。
ネメシスとゼロ。
そして人類を巻き込む最終戦争が始まった。
銀河の運命を決める戦いが、ついに幕を開ける。




