表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハートブレイカー  作者: 諏訪貴信


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
23/38

テレヴィジオン

「未来の、僕。」


その一言だけで、ソウマの思考は止まった。


カプセルの中から目覚めた青年は、ゆっくりと立ち上がる。


身長も、声も、歩き方も同じ。


違うのは、その瞳だけだった。


黄金色に輝く瞳には、何千年もの時間を見つめてきたような静けさが宿っていた。


「信じられない……。」


アリスは思わず後退する。


「DNAを照合します。」


端末を起動する。


数秒後、解析結果が表示された。


一致率──100.0000%


誤差は一つもない。


目の前にいる青年は、ソウマと同一人物だった。


レイが銃口を向ける。


「お前は何者だ。」


青年は穏やかに微笑む。


「君たちがソウマと呼ぶ人間の、最初の個体。」


「名前はもう忘れた。」


「だから、オリジナルと呼んでくれて構わない。」


ソウマは青年を見つめた。


「俺は……クローンなのか?」


オリジナルは首を横に振る。


「違う。」


「君は複製ではない。」


「私の未来の可能性、その一つだ。」


ユウが静かに補足する。


「分岐とはコピーではない。」


「時間そのものが枝分かれし、一つの人生が複数の結末を持った状態だ。」


ソウマはゆっくりと拳を握る。


「じゃあ、俺たちは全員、本物……。」


「そう。」


オリジナルはうなずく。


「だからこそ、統合が必要なんだ。」


「統合?」


アークが問い返す。


オリジナルは艦橋前方の巨大な窓を指差した。


宇宙の彼方。


暗闇の中に、小さな亀裂が走っていた。


最初は一本だった。


しかし、それは生き物のように広がり始めている。


「宇宙が……割れている?」


リディアが息をのむ。


「宇宙そのものじゃない。」


オリジナルは静かに言う。


「可能性が崩壊している。」


ホログラムに一本の木が映る。


幹から無数の枝が伸びている。


しかし、その枝が次々と枯れ落ちていく。


最後には幹までひび割れ始めた。


「これが今の宇宙。」


「分岐を作りすぎた結果、世界は自分自身を維持できなくなった。」


ゼロが低く尋ねる。


「あと、どれくらい持つ。」


「百日。」


オリジナルは即答した。


「百日後、この宇宙はすべての可能性を失う。」


沈黙。


誰もその言葉を否定できなかった。


ソウマは一歩前へ出る。


「統合すれば救えるのか。」


オリジナルの表情が曇る。


「半分だけ。」


「半分?」


「宇宙は助かる。」


「だが、統合された十三人のソウマは、一人しか残れない。」


アリスの顔から血の気が引いた。


「そんな……。」


第七分岐ソウマが静かに笑う。


「最初から分かっていた。」


「俺たちは、そのために生まれたんだ。」


別の分岐が続ける。


「誰かが消えるんじゃない。」


「十二人の人生が、一人の中で生き続ける。」


しかしソウマは首を振った。


「違う。」


「それでも、それぞれが歩いてきた人生は一つしかない。」


オリジナルは静かに微笑んだ。


「だから君が選ばれた。」


その時だった。


船全体が激しく揺れる。


警報が鳴り響く。


「警告。」


「時空境界に高エネルギー反応。」


窓の外。


宇宙の裂け目から、ゆっくりと巨大な影が姿を現した。


それは艦隊だった。


黒い船体が何千隻も連なり、星々を覆い隠していく。


船首には、見たことのない紋章が刻まれていた。


円環の中で、一本の時計の針が折れている。


ユウの表情が初めて険しくなる。


「来たか……。」


レイが叫ぶ。


「敵なのか!」


ユウは短く答えた。


「ああ。」


「前の宇宙を滅ぼした最後の文明。」


オリジナルは艦隊を見据え、低くつぶやく。


「彼らの名は――」


《クロノス帝国》


その瞬間、艦隊の旗艦から全宇宙へ向けて通信が送られてきた。


「オリジナル・ソウマへ。」


「判決の執行猶予は終わった。」


「宇宙を返還せよ。」


ソウマは息をのむ。


二百年前に終わったはずの裁判は、宇宙そのものを法廷とする新たな戦いへと姿を変えていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ