第1章 地下街 6
地下街 6
修羅場は一瞬だった。
椅子を投げた客が警邏隊に掴みかる。
次の瞬間には、床に転がされていた。
「痛っ!?」「当たり前だ」
酒場の空気が一気に荒れる。
「うわー……」
ミナは完全に他人ごとの声をだした。
ヴィクは頭を抱えてる。
「だから椅子投げんなって…」
誰も聞いてない。
客の仲間が怒鳴る
警邏隊も怒鳴る
皿の割れる音
「おい!押すな!!」「お前が押したんだろ!」「帰れもう!!」「店閉めろ!」「閉められるか!!」
ユラは壁際に下がる。
こういう時、どう動けば良いのかわからない。
地下街には地下街の流れがある。
でもユラは全てを覚えきれていなかった。
その時、1人の客が警邏隊の腕を振り払ってユラの方に走った。
「うわ!?」
避ける間もない。
客の肩がぶつかる。視界が揺れる。次の瞬間
ーガシャン!!
後ろの棚が倒れ瓶が割れた。
酒の臭いが一気に拡がった。
数秒 静まり返った。
ヴィクがゆっくり顔をあげる。
床
割れた瓶
酒
そしてユラ。
「……あー…終わった...」
ミナが呟く
「カワイソー」「棒読みやめろ!」
ヴィクが真顔で返す。
隊長が床を見て眉をよせた。
「お前ら毎回壊してんな…」
「今回は俺じゃねぇー!!!」
「毎回そう言う」
客は床に転がったまま呻いてる。
酒臭い。
ユラは暫く呆然としていた。
隊長がふとユラを見た。目があった。
灰色の制服
冷たい目
ユラの背中が冷えた。
「……お前」
ユラの呼吸が止まる。
「登録証見せろ」
酒場が静かになった。




