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橙の帷と消えた国  作者: T.M
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第1章 地下街 4

無事に最後まで辿り着きました。

これで一区切りです。

ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございます。

最後までお付き合いいただければ嬉しいです。

地下街 4


地下街の冬は外より暖かい。

でも時々、息がつまる程熱かった。


笑い声


全部近い


ある夜

ユラは奥の廊下に立っていた。


薄暗い灯

赤い絨毯

閉じた扉


向こう側から笑い声がもれてくる


ミナが壁に寄りかかり、キセル吸っていた。

「緊張してる?」

「別に」

「便利な言葉」

ユラが顔をあげる。

「何」

「別に」

ミナが煙を吐く。

「本当に平気なやつ、そんな言い方しないよ」

「………」


その時、奥の扉が開いた。

侍女の1人が出てくる。


「次、ユラ」

ユラの指先が少し冷える。


ミナがキセルの灰を落とした。


「無理なら上がってきな」

「………」

「地下街なんて逃げたもん勝ち」

ユラは少し笑う。

「ミナって、優しいんだか雑なのかわかんない」

「優しくないよ」

「優しかったら、ここでは生き残れない」


扉の向こうから男の笑い声がする。

ユラは数秒黙った後、扉に手を掛けた。


その夜から何かが変わり始めた。

地下街は慣れる場所だ。

怖さにも、諦めにも、擦れていくことにも。


最初は嫌だった。でも、気づけばユラはもう地下街の歩き方を知っていた。


客に笑うタイミング

怒らせない距離

触られても流す顔


全部覚えてしまった。


ある夜

仕事終りにミナが長椅子に寝転がる。

「腰痛い」「歳」「ユラ殴るよ?」

ヴィクがしたから怒鳴る。

「お前らまだいんのか!」

「帰る家無いのー」

「俺もだよ!」


地下街に笑い声が響く。

ユラも笑った。

昔ならこんな場所で笑うなんて思わなかった。 

でも今は、祖父母の屋敷にいた頃より自分が生きてる感じがした。


それが良いことなのか

悪いことなのかは

もう、分からなかった。

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