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橙の帷と消えた国  作者: T.M
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第2章 アルヴァ塔 16

アルヴァ 16


後見先との面談は3回行われた。

相手は夫婦2人暮らし。

静かな家

手入れされた花壇

部屋の中も綺麗だった。

悪い人達じゃない。

むしろちゃんとしている。

だから余計に息が詰まった。


「慣れるまでは大変だろうけど、ちゃんとやり直して行きましょうね」


話し方が祖母に似ていた。責めてる訳ではない。

"正しい方へ戻そう"とする空気が苦しかった。


ユラは黙ったまま頷いた。


帰りの馬車の中でユラはアルヴァに帰りたい。頭の中でそればかりか繰り返していた。


レイスもログも何も話さなかった。


夜、教官室でレイスとログが小声で話していた。

「……駄目そうですね」

「だろうな」

ログは短く答える。

「条件自体は悪くありません」

「条件の話しじゃねーよ」

静かな声だった。

「……似てましたか」

「似てたな」

ログは煙草をくわえる。


「多分あいつも気付いてる」

教官室に沈黙が落ちる。

レイスは小さく息を吐いた。

「それでも決めなければなりません」

「まあな」

ログはそれ以上言わなかった。 少し疲れて見えた。


後見先が正式に決まった。

ユラは何も言わなかった。

祖母の所じゃなければ何処でもいい。

生活できればそれでいい。

そう思うことにした。

不安はある。

でも口には出さない。

塔の生活も、もう終わる。

その現実だけが少しずつ近づいていた。


出塔前の宣誓は講堂で行われた。

塔生達がならぶ。

前に立つ教官が決められた文言を読み上げていく。


『危険区域への接近を禁ずる』


『問題行動を繰り返さない事』 


『地下街及び関係者との接触を避けること』


静かな声が講堂に響く。

ユラは前を向いたまま聞いていた。


地下街

ヴィク、ミナ、頭の中に浮かぶ。

何も知らないくせに。

心の奥で小さく反発する。

でも顔には出さない。


「宣誓しますか?」

周囲の声が重なる。

ユラも遅れて口を開いた。

「……はい」

納得したわけじゃない。

でも、進むしかなかった。


講堂の外ではアスターが揺れていた。

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