閑話 ログ 2
閑話 ログの動き 2
夜、窓の外では虫の声だけが聞こえる。
ログは教官室で煙草を吸っていた。
机の上には書類が積まれている。
珍しくちゃんと目を通していた。
「……似合いませんね」
後ろから声がした。
レイスが書類を持ったまま呆れた顔をしている。
「失礼だな」
「主任が書類を読んでいるので」
「俺だって読む時には読む」
レイスはその横に新しい綴を置く。
「後見候補です」
「増えた」
嫌そうにペンでつつく。
「主任が全部確認すると言ったんです」
ログは煙草を灰皿に押し付けると書類をパラパラめくった。
年齢
家族構成
仕事
住居
淡々とした文字ばかり並んでいる。「……なぁ」
「はい」
ログは書類から目を離さない。
「ユラ地下街に戻る気がするんだよなー」
レイスはカップを置く。
「戻っても普通に生きられます」
「だろうな」
「地下街はあいつにとって帰れるばしょだ。生きるだけなら困らない」
ログは書類を閉じる。
「でも、あそこしかねぇって思ったままなのが嫌だ」
レイスは書類に視線を落とした。
「主任らしくありませんね」
「そうか?」
「せっかく普通の場所、知っちまったしな」
普通。
その言葉にレイスは目を細める。
アルヴァは普通の場所じゃない。
だが、地下街よりは普通だ。
ログが長く咳き込む。
レイスが顔をしかめ
「病院へ行ってください」「嫌だ」「主任」「面倒」
「本当にそういう所は変わりませんね」
「今更だろ」
ログは笑う。でも咳の後の呼吸は少し苦しそうだった。
窓の外では夏の終わりの風が吹いていた。




