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橙の帷と消えた国  作者: T.M
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第2章 アルヴァ塔 15

アルヴァ 15


夏の終り頃

ログは教務監室と外出を繰り返していた。


戻って来る度、煙草の臭いが強くなっていた。

最近咳も増えた。


「主任」

「んー?」

「病院行ってください」

「嫌だ」

レイスはため息をつく。

「本当に子供ですね」

「今更だろ」

ログは笑う。

その直後、また咳き込んだ。

「無理だけはしないでください」

ログは立ち上がった。

「行ってくる」

「また、教務監室てすか?」

「まあな」

レイスは疲れた顔で帳簿を閉じた。

「主任」

「ん?」

「何故そこまでするんですか?」

「んー。何でだろうなー」


レイスはログをみる。

最近この人は変だ。

面倒事から逃げる人だった。

書類を渡せば逃げるし。

教務監室なんて嫌がる場所の筆頭だ。

それなのに今は自分から動いている。


「まあ、駄目なら駄目でまた考える」

扉に向かう途中、また咳き込む。

「だから病院にー」「嫌だ」「主任…」「嫌なものは嫌だ」

ログはそのまま手を振り出ていく。

レイスは机の上の書類をみる。

後見人申請。

出塔支援。

例外処理。

全部、本来ならこんな形で動くものじゃない。

でも。静かに目を閉じる。

放置することにも、もう賛成できなかった。


数日後

ユラは再び教官室に呼ばれた。

レイスとログがいた。

「正式に話が来ました」

「例外申請と外部後見先の紹介、条件付きですが許可が降りる可能性があります」

ユラは黙って聞いていた。

現実感がない。

でも、少しずつ決まっていく。

レイスは続ける。

「後見先はこちらで選定出来ます」

「知らない人?」

「そうですね」

「最終的には貴女から自身が決めることになります」

ユラが顔を上げる。

「…私が?」

「はい」「ここを出た後何処で生活するのか、誰を頼るのか。貴女が決めなければなりません」

ユラは俯く。

今までずっと誰かに決められていた。

祖父母、

地下街、

アルヴァ


今初めて、自分で選ばなければならない。


窓の外ではヒースの花が揺れていた。

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