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橙の帷と消えた国  作者: T.M
24/31

第2章 アルヴァ塔 13

アルヴァ 13


夏が近づく頃、塔を出る子が増え始めた。


荷物をまとめる音


迎えに来た保護者の声


談話室の空気も何処か落ち着かない。

ユラは窓際からぼんやり見ていた。

「次、あいつかー」

ノアが呟く。


廊下では、年長の少女が教官と話している。

母親らしき女性がぎこちなく微笑みながら隣にいた。


祖母は来なくて良い。

会いたくもない。

怖い


レイスから呼ばれた。

「ユラ、教官室まで。話があります」


部屋に入ると椅子を進められ、書類を渡される。

「面談の日が決まりました」

「………」

最悪だった。

来なくて良い。

会いたくない。

怖い。

「引受人が居なければ、ここを出せません。貴女から折れて下さい」

「嫌です」

レイスは小さく息をはく。

「年を取ると人は簡単には変われません」

そんなこと厭になるほど知っている。

「それでも歩み寄らなければならない場面もあります」

「………」

「話しは以上です。部屋に戻りなさい」

なかなか立てなかった。


ベッドに寝転がりレイスに言われたことを考える。

身元を引き受ける人が居なければ出られない。

それはわかってる。

でも、またあそこに戻るのはやだ………。

頭の中でそれが、グルグルと回る。

むくっと起き上がり、生活はここに居るのと変わらない。

後は機嫌を見て、怒らせないように適当にやり過ごせばいい。


窓から見える月を見ながらユラは自分に言い聞かせた。


面談の日

ユラは応接室の扉の前にいた。


逃げたい。今すぐ部屋に戻りたい………。


レイスが扉を開けた。


祖母が座っていた。

昔より小さく見えた。

顔を見るだけで息が詰まる。


「久しぶりね」

その声で昔に戻らされた。

「………」

「随分大きくなって」

何でもない言葉だった。

祖母が静かに続ける。

「あなたが塔に入って取れだけ迷惑をかけたと思ってるの?地下街なんて場所に行って。近所でも噂になっているのよ?皆どんなに心配したか」

「………」

「それでも反省したのなら引き取ります。もう一度ちゃんと…」「嫌だ」

祖母が眉を寄せる。

「なんて言ったの?」 「帰らない」声が震えた。でも、止まらなかった。


「今さら何?」「ユラ」「地下街を悪く言うな!!

あんた達よりよっぽど良い!!!」

息が苦しい…頭が熱い

祖母が口を開きかけた。

レイスにが間に入り

「今日はここまでにします」

「ですが………」

「後日改めます」

中止になった。

ユラは荒い息をはく。

祖母の顔が見られなかった。


その夜、教官室の空気は重かった。

レイスは机に肘を付き額を押さえてる。

「失敗でした」

珍しく弱っていた。


ログとは窓際で煙草を吸っている。

何も言わない。


「せめて関係修復の糸口だけでもと思ったのですが」

沈黙が落ちる。

煙草の先が赤く光る。

ログが静かに

「何であいつが折れなきゃならねぇんだ?」

レイスが顔を上げる。

「主任」

「ガキに何でもかんでも背負わせるな」

教官室が静まり返る。

レイスは何も言えなかった。

「わりぃ」

ログは煙草を揉み消し部屋を出ていった。


ユラは倉庫で作業していた。

ログは近くの椅子に座り煙草をくわえていた。


「この間はごめんなさい」

「何が?」

「色々と」

ログは煙草を指で回す。

「気にすんな」


窓の外を見ながら

「俺が養子に出きればなぁ」

ぽつりと言った。


ユラの手が止まる。

夏の風が静かに吹いていた。

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