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橙の帷と消えた国  作者: T.M
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第2章 アルヴァ塔 10

アルヴァ 10


アルヴァの生活は変わらない。

起きて、働いて、本を読む。

夜になると、ログの咳が何処からか聞こえる。

その繰り返し。


ユラは書庫の整理を手伝わされていた。


高い本棚

古い本

書庫は静かだ。静かすぎて眠くなる。


「終わった?」

振り返るとログだった。「まだ」「遅いな」「片付ける量が多い」

ログは本棚を見上げる。「俺も嫌い」

「なんで来たの」

「レイスに押し付けられた」

ログが机に焼き菓子を置いた。

「談話室で余った」

余るわけがない……。


春の光が窓から薄く差し込んだ。


「外、慣れた?」

急に聞かれて、手を止める。

「………少し」

「地下街行かなかったな」


地下街禁止。

わかってる。

理由はそれだけじゃなかった。

「会ったら戻りたくなりそうだったから」

無意識に口から出ていた。

「………」

ログは静かに頷いた。

「あるある」

否定しない声だった。


ユラは棚に視線を戻す。


書庫は静かだ。

地下街とは全く違う。

それなのに最近少し落ち着く。

「まぁ、戻りたい場所が有るのは悪くねぇよ」

ユラは返しができなかった。


ただ、その言葉が胸に残った。

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