第2章 アルヴァ塔 8
アルヴァ 8
春が近づき、アルヴァの雪は少しずつ減って行った。
朝の空気はまだ冷たい。
それでも冬とは違っていた。
「眠い…」
ノアが机に突っ伏す。
「寝ろ」「起きろって言うくせに」「昼だから」「理不尽」
食堂にログが入ってきた。珍しく煙草を吸ってない。代わりに書類束を持っていた。
ノアが嫌そうな顔をする。
「うわぁ……」
「何?その反応」
「主任が紙持ってる時、ろくなことが無い」
「正解」
「嫌だー!」
笑いが広がる。
レイスが遅れてきた。
「主任、先に説明しないでください」
「楽しそうだったから」
「子供ですか」
「近い」
「………」
レイスが少女達を見回す。
「来週、市街許可が出ます」
ノアが目を丸くした。
「外!?」「条件付きです」「でも、外!」
嬉しそうだった。
外。
胸の奥がざわついた。
地下街、ヴィク、ミナ
思い出が急に近くなる。
ログがぼそっと言う。
「逃げんなよ」
「主任そればっか」
ログは肩をすくめた。
「大事」
レイスが書類を置いた。
「許可区域以外への移動は禁止、問題を起こした場合以後の外出禁止」
「はーい」
返事が軽い。
ユラは視線を落とす。
外に出たいのか出たくないのか。
自分でもまだわからなかった。
市街許可の日。
月に1度の外出日だった。
朝からノアが煩かった。
「まだ?」「まだ」「後どれくらい?」「知らない」「主任まだ?」「知らない」
春の王都は雪が殆んど残ってない。
レイスが許可証を確認しながら
「地下街への立ち入りは禁止です」「そりゃそうだ」誰かが呟く。
「2人1組で行動。日暮れ前には戻ること。問題を起こした場合は……」
ログがユラをみる。
「顔青いぞ」「そう?」「逃げる?」「主任それ好きだね」「趣味」
少し肩の力が抜けた。
アルヴァの門が開く。
ノアが真っ先に飛び出した。
「うわー!外!」
「子供……」
ログが隣で呟く。
「子供だろ」
目の前に王都の町並みが広がっていた。




