第2章 アルヴァ塔 3
アルヴァ 3
アルヴァの朝は早かった。
まだ外が薄暗い内から鐘が鳴る。
重い音だった。
ユラは毛布に顔を埋める。
寒い
眠い
起きたくない
「起きろー」
廊下から気の抜けた声が聞こえる。
続いて咳。
ログだった。
「主任、ちゃんと起こしてください」
レイスの怒鳴り声が飛ぶ。
「起きろって言った」
「もっと他にあるでしょう!」
「朝だぞー」
「小さい子に言う言いです」
廊下が騒がしい。
ユラは毛布の中で目を閉じたままぼんやり聞いていた。
地下街の朝とは違う。
酒臭くもない。
怒鳴り声も少ない。
でも、静かすぎて落ち着かなかった。
「ユラー」
ログの声、直ぐ扉の向こう。
「死んでる?」
「死んでない…」
「じゃあ起きろ」
適当だった。
少しだけ地下街の空気に似ていた。
少女達の部屋は狭かった。
向かいのベッドでは少女が暗い顔で座ってる。
「朝嫌い…」
「わかる」
思わず返していた。
少女が少しだけ笑う。
「新入り?」
「昨日来た」
「最悪な時期に来た」
「何で?」
「冬」
それだけだったが、妙に納得した。
食堂ではもう食事が並んでいた。
麦粥
固いパン
薄いスープ
地下街より質素かも知れない。
でも、温かい。
ユラが座ると、ログが向かいに座る。
煙草の臭いがした。
「ちゃんと起きたな」
「子供扱い」
「子供だろ?」
ユラは麦粥をかき混ぜる。ログが小さく言った。
「地下街もどりてぇ?」
匙が止まる。
「………」
戻りたい。でも、戻っても同じだ。
ミナもヴィクも多分それを分かっていた。
ユラは俯いたまま
「……わからない」
ログは頷く。
それ以上、何も聞かなかった。




