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橙の帷と消えた国  作者: T.M
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第2章 アルヴァ塔 1

アルヴァ塔 1


アルヴァ塔は、王都の外れにあった。


灰色の石塔


高い壁


冬空


遠くから見た時最初に思ったのは

─寒そう 


だった。

実際寒かった。


詰め所で1晩過ごした後、ユラは護送馬車に乗せられた。

逃げようと思えば、多分逃げられた。

でも、逃げた先が思い付かなかった。

地下街へ戻っても、また同じことになる。

それが分かってしまった。


馬車が停まる。


重い門


軋む音


アルヴァ塔の中庭には、雪が薄く残っていた。


「降りろ」


馬車を降りて塔を見上げる。


高い


灰色


冷たい


いかにも"閉じ込める場所"だった。


入り口の前には、女性が立っていた。


黒い外套


細い目


鋭い声


「遅い」


隊長が肩をすくめた。


「地下街でもめた」

「また?」

「また」

女性は露骨に顔を歪めた。

「で?」

「保護対象」

女性の視線がユラに向く。

上から下まで見られる。

品定めみたいで嫌だった。

「名前」

「ユラ」

「年齢」

「17」

「本当は?」

「………」

「まあ、いい」

女性は手元の紙に何かを書き込みながら言う。

「私はレイス教官」

「ここでは勝手な行動、喧嘩、無断外出、窃盗禁止」


「監獄?」

「…だったら楽だった。」

レイスは即答する。

「……」

怖い。

地下街とは違う種類の怖さだった。


静かすぎる。


人の声がしない。


石の匂いしかしない。


その時、廊下の奥から咳が聞こえた。

乾いた咳。

ゆっくり男が歩いてくる。


煙草の臭い


眠そうな目


レイスが嫌そうに顔をしかめる。

「主任」

男が手を上げる。

「おはよーございます」

「昼です」「じゃあ、こんにちは」

適当だった。

ユラは思わず男を見る。男もユラを見る。

数秒

それから男は煙草をくわえながら言った。


「……増えた?」

レイスの眉がピクリと動いた。

「物みたいに言わないで下さい」

「違うの?」

「違います」

「ふーん」

それからユラを見た。

「飯食った?」


それがログ主任との最初の会話だった。

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