第1章 地下街 9
地下街 9
「……お前一緒に詰所までこい」
ユラの背中が冷える
嫌だった
帰りたくない
捕まりたくない
ユラは反射的に言った。
「いや」
隊長が眉をよせる。
「嫌じゃねぇ」
「嫌なものは嫌」
「子供か」「子供だけど」
ミナが吹き出す。
「そこ認めるんだ」
ヴィクも少し笑う
隊長は額を押さえた。
「お前なぁ」「帰らない」「返すとは言ってねえ」「話聞くだけだ」「絶対嘘」「何でだよ」「顔」ミナが肩を震わせる。
「ユラ、それ言う?」「だって怖い」
隊長がため息をついた。「こえーのは、お互い様だ」「何で」「ここのガキは大体逃げる」
ヴィクがぼそっと
「正解」「お前は黙ってろ」「カワイソー」「………」
いつものながれだ。
でもユラの指先は冷たいままだ。
詰所に行ったら終る気がした。
ここに戻れなくなる。
また、
"正しい場所”に戻される。
それが嫌だった。
ヴィクか煙草を消しながら言う。
「……まぁ、1回行っとけ」
ユラが顔をあげる。
ヴィクは視線を逸らしながら続けた。
「ここは、子供がずっといる場所じゃねぇし」
ミナは珍しく何も言わない。
ヴィクは小さく付け足した。
「飯は食わせて貰えるんだろ。多分」
ユラは思わす吹き出した。
「そこ」「大事だろ?」ヴィクは真顔だった。
隊長が呆れたように
「お前、本当にそればっかだな」
「生きるのに必要」
「否定はしねぇけど」
ユラは分かってた。
ここで笑っても、もう戻れない。
地下街の夜が少しずつ終わり始めた。




