第8話 陰キャ女ちゃん視点
私のクラスにはヤバい人がいる。一ノ瀬ルナという男子生徒だ。
ちなみに私の左前の席に座っている。
アイドルみたいな可愛い名前をしているし、実際顔はめちゃくちゃカッコいい。だが目付きと傷跡、その筋肉質な体に本能的な恐怖を覚える。
入学初日に見た時はこれ高校生活終わった…、となったが二日目の自己紹介で優しい笑顔をうかべた彼を見た時、正直「ルナくんっていうんだ…。最初は怖そうと思ったけど、最後の笑顔、優しそうだったな…。ルナくんのこと、もっと知りたいかも…」と思わされてしまった。
だが直後に彼に絡んだ先輩達の末路をみてクラスは恐怖のどん底に落とされた。彼にイジメられたら高校生活終わる。とにかく目をつけられないようにしないと。
それから一週間、彼が嫌でも視界に入るのでチラチラと観察していたが、大人しい。というより真面目だ。提出物なんかも意外とちゃんと出している。
そんなに悪い人ではないのかな?と思い始めた時、隣の内田くんが彼から拷問を受けていた。ラノベのあらすじを教室で音読させられるという拷問だ。私はお葬式とかの緊張した状況で笑いそうになる事がある。彼の「は?なに?自己紹介?」というイジメに近い冗談につい吹き出してしまった。
ヤバッっと思い表情を取り繕うが、彼はこちらを見ている。私が顔をそらしてトイレに緊急避難しようとするが間に合わず、彼においでおいでと手招きされた。
「3人で飯くおうぜ」
あぁ、お父さんお母さんごめん。折角塾にも入れてもらってここに入ったのに高校生活終わるかも…。諦観の中、逆らう勇気もないので弁当を持って椅子を内田くんの机に近づける。
「俺、ルナね。ルナくんでいいよ。名前なんだっけ」
私達を交互に見てきた。圧がすごい。
「内田大輝です」
「松村瞳です」
2人とも面接官相手みたいな答えになってしまった。声小さすぎて不合格だこれじゃ。
「大輝と瞳ね。あとタメ語でいいから。よろしくね」
優しい笑顔で言ってきた。陽キャ特有の名前呼びで一気に距離を詰められている。およそ共通の話題がなさそうな彼と私達だ。その日は、無難などこ中?とかの質疑応答に私達が答えるだけの時間で終わった。「ぼっち3人でこれからも昼飯くおうぜ」と言ってくれたときは不安と嬉しさが綯い交ぜになった複雑な気持ちになった。
それからは昼ご飯を一緒に食べる仲になった。彼は内田くんに対してはノンデリなところもあるが私には基本的に紳士だ。なんとなく人となりは分かった。不良みたいな見た目で、実際ちょっと不良っぽい気質で、ノンデリだけど悪い人じゃない。
正直ちょっと優越感がある。クラスで恐れられてる不良イケメンが私にだけ話しかけている。いや、内田くんもいるんだけどさ。
体育のときとかに同じクラスの女子にイジメられてないか心配された時、そんなことないよ全然優しいよ、とか言っちゃうのが気持ちいい。
でもこれを言っちゃうといい人バレした彼は陽キャグループに入って私達すぐに捨てられるんだろうな。
内田くんとNTRとBSSの定義について討論している彼をみて少し寂しさを覚えた。




