第5話
今日も今日とていたいけな学生をビビらせながら登校する。クラスを微妙な空気にしつつも自分の席までたどり着いた。
誰にも話しかけられない為、スマホをぽちぽちといじる。
まだだ、まだ熟成する。
好きの反対は無関心という言葉がある。前までは好きの反対は嫌いとか殺意とかだろって思ってたが、こと恋愛においてはこの言葉は正解なんじゃないかと思っている。
要は意識させることだ。この人怖いとか、ヤバそうとか思ってもらってるほうが、影の薄いぼっちタイプより恋愛に発展しやすいのだ。少なくとも俺はそう思っている。
だから陽キャっぽい男子に「ねぇねぇ仲良くしよ~俺こう見えてもいいやつなんだよ~」みたいな擦り寄り方はしない。ダサいし。
HRを終えると入学式の翌日なのに、いきなりテストだ。入学前にだされた課題から出題されるやつだ。さすが進学校って感じ。これ来年チビ共が入って来たとしてやっていけるんか?
テストは概ねできた。出来すぎたくらいだが、狭い範囲だし皆こんなもんだろう。
テストを終えたらLHRだ。
提出物の回収を終えると自己紹介がはじまった。俺は4人目だ。
前のガリ勉がなんの面白みもない自己紹介を終える。
「一ノ瀬ルナです。月と書いて、ルナ。気軽にルナってよんでね。特にスポーツとかはやってないけど、鍛えてるから運動は得意かな。よろしくね」
最後に優しい笑顔をひとつまみっと。
無難だ。無難でいいはずだ。この顔でウケを狙っても、今の段階ではハハハ…みたいな愛想笑いしかされないだろうしこんなもんでいいだろう。
これで「ルナくんっていうんだ…。最初は怖そうと思ったけど、最後の笑顔、優しそうだったな…。ルナくんのこと、もっと知りたいかも…」となったはずだ。
副案として不良漫画から参考にした、「一ノ瀬ルナだ、よろしくな」で終わりっていうのもあったが、痛いやつ認定されて高校生活を棒に振るのが目に見えていたため没とした。
チラッと美少女ちゃん達の方を見るとペチペチと拍手してくれているので、まぁ悪くない反応だ。
美少女ちゃんズも気になるが正直、目下一番気になっているのは主人公だ。モブくん達の自己紹介を聞き流しているとようやく主人公くんの番になった。
「あ、佐藤健太っていいます。中学で部活は帰宅部でした、ハハ…。ゲームとか好きです。よろしくお願いします」
腹から声出せや、と腹パンしたくなるかぼそいボイスで自己紹介を終えた。足がプルプル子鹿のように震えていたので、大勢の前でしゃべるのが苦手なんだろう。
美少女ちゃん達が、眩しい笑顔で拍手してあげている。
負けた気分になってきたが、勝負はここからだ。
あんだけ女をはべらしているんだから、見た目に現れない実はすごいやつなんじゃないか?と思ったがあのボソボソした自信の欠片も感じられない自己紹介から、実は登録者200万人の動画投稿者です、とかカリスマゲーム配信者ですって線はなさそうだ。
マジでなんだこいつ。




