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NTRゲー悪役みたいな外見してるけど、これマジでそういう世界じゃないよね?  作者: 小野千春


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第30話

 合宿も終わってしばらく経った。今日は休日で、愛梨が家に来たいと言うので全体的に掃除をしている。特に変な事をする気もないので双子も母さんも家にいるが構わない。


 家中に掃除機をかけて、部屋に散らばっている筋トレ器具をまとめて大体準備完了だ。掃除用具を片付けてリビングのソファに寝転がる。


「愛梨ちゃんってどんな人?何時に来るの?」


 ソファを背もたれにして絨毯に座って蓮とゲームをしている結衣が聞いてきた。


「普通に明るいタイプで話しやすい感じ、もうすぐ来るよ」


「気になる~。なに系?ギャル?」


「もうすぐ見れるんだからいいだろ。あとギャルではないな」


 スマホを見ると「今家でたよ~」と送られていた。


 しばらく休憩しながら待っているとインターフォンが鳴ったので、玄関に迎えにでる。


「いらっしゃい」と玄関を開ける。扉の前にいた愛梨が「やっほ、どう?」と言って服をつまんでひらひらさせてきたので、愛梨の姿を上から下まで眺めてみる。


 ラフなオーバーサイズの灰色のプルオーバーパーカーに、パーカーからぎりぎり除く丈のショートパンツにスニーカー。生足がでまくってて、下を履いてないようにも見えて率直にいってエロい。上にはキャップを被っていて愛梨の活発そうな雰囲気によく似合っていてかっこかわいいって感じ。正直にいってめっちゃ好みだ。


「めっちゃいいじゃん。そういうラフな格好もすげー似合ってる。俺も割と動きやすい格好好きだから、そういうの好みだな」


 女の子っぽいひらひらした可愛い服より、こういう格好の方が好きだ。一緒に歩いてて楽ってのもあるが。俺自身が、ボタンとか襟とか付いてる服が嫌いってのもある。


「ありがと!私もこういうスタイル好きなんだよね」といって体を寄せてきたので抱きしめる。軽くキスをしてから家に招き入れた。


「おじゃましまーす」


「母さんはまだ寝てるから、とりあえず下の双子紹介するわ」


 靴を脱いでいる愛梨に声をかけてリビングに向かう。


 蓮は絨毯に寝転がってゲームをしているし、結衣はソファを背もたれに絨毯に座ってゲームをしている。インターフォンが鳴ったのが聞こえてないような態度である。


「ほら、お客さん来たから地べたから起き上がれ。あとゲームも一旦やめて挨拶しなさい」


 2人が手を伸ばしてきたので起き上がらせる。立つことにすら介助を求める双子の態度に呆れていると、愛梨が「失礼しまーす」とペコペコしながらリビングに入ってきた。


「いらっしゃい。こっちが蓮でこっちが結衣。前もいったけど双子で1個下ね」


 チビ共を紹介する。


「あの、ルナくんとお付き合いさせてもらってます、高橋愛梨です。よろしくね?」


 礼儀正しく一礼するとそう挨拶した。


「えーていうか可愛い~!お兄ちゃんマジ?マジやるね~ホント!」


「マジ可愛いじゃん。お兄ちゃんさすが」


 結衣と蓮である。2人ともふてぶてしい態度だし、蓮は謎に嬉しそうである。


「挨拶もろくにできない奴らでごめんね」といいながら挨拶をさせる。


「全然いいよー!てか、大きくなったねえ!ほんとそっくりで可愛い!」


 大きくなったね?と一瞬違和感を感じたが、スルーした。愛梨が俺達の顔をそれぞれ見比べる。


「なんか、やっぱり3人とも似てる!顔の作りが同じだね~」


 確かに俺と双子も目元を除けば似たような顔をしている。


「顔は全員母さん似だからね~。俺の目元だけ父さん似」


 ほうほうと頷きながら俺達の顔を再度見比べている。


「愛梨ちゃんめっちゃいい子そう。背も高いし、いいね。格好もおしゃれだしよかったじゃん」


 と、結衣がコソコソ言ってきた。まぁね。


「とりあえず座ろうぜ」と愛梨とソファに腰を下ろす。双子は先程までの定位置についた。


「お兄ちゃんの何がよかったの?」と蓮が愛梨に聞いている。なんかトゲある聞き方するなこいつ。普通どこが好きなの?とかだろ。


「え、え~?えっと、優しいとことか?面白いし、カッコいいし…。色々!」


「まぁ確かに」と蓮が腕を組んで頷く。「まぁいっか」と呟いている。謎だ。


 そこから双子でいつ出会ったの?とかどっちから告ったの?とか根掘り葉掘り聞いてきたので愛梨といちいち全部答えてやった。


「お兄ちゃんをしっかり捕まえててね」と蓮が念を押している。何様ってか誰目線だよ。


 特に何かをやる予定もなかったのでそのままリビングで皆でゲームをすることになった。定番のキャラ物レースゲーから始まり、格ゲーやらパーティーゲームまで一通りやってみる。


「ちょ、2人ともゲームうますぎ。なにやっても勝てないんだけど」


「こいつらゲーム大好きだからな。接待プレイって言葉も知らないし」


「いいじゃん、お兄ちゃんボコボコにできるのなんてゲームの中くらいなんだし」


 蓮がそういう。ここのところたまに気が向いて蓮と対戦すると100%ボコられる。恨みでもあるんじゃないかってくらい容赦がない。普通にハメ技とか使ってくる。


「それな。うちらが唯一ボコれるのがゲームくらいなんだからそれくらいいいじゃん」


 結衣もそんな事を言ってくる。


「ゲーム以外のことで勝ってみようとは思わねえの?勉強とかさぁ」


 というと、勉強に触れられたくなかったのか「まぁまぁ」とか言って会話を流してきた。


「仲良しだね~!小さい頃からずっとこんなに仲良しなの?」


「ん~まぁね。大体仲は良かったけど、お兄ちゃんが中学入った頃はちょっとだけ怖かった頃があったかな」


 蓮がタメ語で愛梨に答える。2人ともさっきからタメ語だが普通兄とタメの彼女には敬語じゃないの?愛梨が気にしてなさそうだから別にいいけど。


 中学に入った頃か。今となっては懐かしいが思春期というか、反抗期というか、そういう感じで少しグレていた頃だ。母さんが仕事で忙しいからと、双子の面倒を見るのが普通だったしある程度自主的に家事とかもやっていたが、それを疑問に思いはじめた。


 中1で身体がまだ出来上がって無いのに見た目が悪そうなので、学校でも先輩とかに絡まれるしだるかった。廊下を歩いていると普通に肩をぶつけられたり、今じゃ考えられないようなダル絡みをされていた。ただでさえ筋肉質だった身体をさらに鍛えはじめたのがその時だ。


 それから売られた喧嘩を買いまくって、一通り絡んでくる人間がいなくなった頃にはヤバイ奴みたいになってて、母さんにも学校から連絡が入った。涙目で今までごめんね、とか暴力沙汰はもう辞めてとかなんとか言われた俺はすんなり謝罪を受け入れた。


 そこからは、まぁ双子の面倒を見るのも、勉強やら宿題やら筋トレやらそういうのも、嫌なことでも我慢してする努力の訓練だと思って受け入れて、今に至る。


 ある程度自分を律することができるようになったことはまぁいいんだが、最近の双子の様子を見てて思うこともある。これで良かったのか?俺も母さんもこいつらを甘やかしすぎたんじゃないだろうか。ゲーム機やPCまで買い与えられてすっかりゲーマーだ。父さんの保険金などがあるにしてもそんな裕福ってわけではないのに。


 そんなことをたまにこいつらに言うと、いやいや、普通だって!お兄ちゃんが頑張りすぎてるだけで、普通の中学生はこんな感じだって!とか言い訳してくる。そう言われるとそんな気もしてくるのが不思議だ。まぁいいか。今考えることじゃない。


「中学入りたての時は軽く反抗期入ってたからな」


 と軽く流す。もうゲームはいいや。勝てねーし。


「俺の部屋いくか」と立ち上がって愛梨を誘う。バイバイと手を振る双子を置いて階段をのぼって愛梨を部屋に招いた。


「部屋綺麗だね~!」とキョロキョロ部屋を見回している。


「うわ!重っ!」とダンベルを持ってみたり、ベッドの下を覗いたりしている。


「そういうのはスマホで見る派だからないぞ」


「え~!こういう女の子が趣味なんだ~っていうのやりたかったのに」


 といいながら俺のベッドに腰掛けた。あぁあれね。定番のやつね。


「なんか、あれだね。勉強と筋トレと寝るためだけの部屋って感じだね」


 無趣味のつまらない奴、と思われてそうな事を言われてしまった。内心ちょっとショックだが、事実である。愛梨の隣に腰を下ろす。


「そう言われると、そうだな。すげーハマってる趣味とかないし、暇になったら外に出かけるからな~。愛梨はバスケ以外に趣味あんの?」


「私もそう言われると…うーん?ピアノ…は大分前に辞めたし…えっと、体動かすのが好きかな!」


 それって趣味なのか?別にいいけど。


「いいね。今度駅の近くにボルダリングできるジムできたからそこ行ってみようぜ」


 ちょっと気になっていたとこに誘ってみる。


「そこ知ってる!めっちゃ行きたい!気になってたんだよね~!」


「あとバスケとか教えてよ。俺も多少はできるけどさ、折角公園にコートあるし暇な時一緒やろう」


「やるやる!てかその言葉が聞きたかった!ランニングしてる時に一緒にバスケしたいな~って思ってたんだよね!」


 嬉しそうににこにこしているので、俺まで嬉しくなる。それから2人でベッドに横になっていちゃついたり、雑談したりスマホでお互い行きたい場所とかを見せ合ったりしながら過ごした。デート先を10個分くらいストックできたのでめちゃめちゃ有意義な時間だった。


「母さんもそろそろ起きてるだろうし、挨拶してから帰る?送ってくよ」


 家に来てから5時間くらいだが、もともとその予定で夕飯も自分の家で食うとのことだったのでそろそろ時間だ。


「ん~そうだね。そろそろかぁ…」というとぎゅっと抱きしめてきた。胸に顔をぐりぐりしながら「んー帰りたくないよ~」とくぐもった声で言っている。可愛すぎる。しばらくあやしていると、「よし!今日は帰る!」と突然ベッドから起き上がった。


「まぁ明日も会えるしね」と言って服を直している。俺も起き上がって軽く伸びをしたあと、鍵をもって送る準備をする。


 リビングに行くと母さんがソファでスマホをいじっていた。扉を開けた俺を見てニヤっとすると立ち上がった。


「母さん、俺の彼女」と愛梨を紹介して、軽く背中を押してやる。


「あの、ルナくんとお付き合いさせてもらってます、高橋愛梨です。」


 と愛梨が一礼すると、母さんが愛梨に近づいて手を取った。


「ルナの母の春香です、よろしくね。ていうか、めっちゃ可愛いじゃん!」


「でしょ?だから言ったじゃん!マジやばいって!」と結衣が地べたでスマホをいじりながらなんか言っている。なんかこの家の状況を見られるのが恥ずかしくなってきた。


「その、春香さんもすごく綺麗ですね。なんていうか、結衣ちゃんそっくり」


 母さんは軽くヤンママ風だが、確かに若くみえる。子供をチビとか言っちゃう感じの風貌だ。


「うわ~、すごいいい子。ルナをよろしくね?」


 今のでなにが分かったのか分からんがいい子認定されている。


「はい、こちらこそよろしくお願いします」


 愛梨はペコペコ頭を下げている。なんかヤンママ風の母さんと絨毯に寝転んでいる双子というこの状況を見せるのが恥ずかしいというかいたたまれない気持ちになってきたので強引に連れ出そう。


「時間もアレだしそろそろ送ってくから」と言って家から連れ出した。3人はまた遊びに来てね~と手を振っていた。


「なんか、うちの家ってあんな感じなんだよね。ごめんね?」


「え~全然いいよ!ていうか楽しそうな家でいいな~って思ったよ?」


 本当か?なんか底辺家族とか思われてないか心配になる。家自体はそれなりの一軒家だけど、俺は見た目ヤンキー風だし、双子はだらしないゲーマーだし、母さんは見た目がヤンママ風だ。二中の奴相手だと気にもしなかったが、愛梨に見せるとなるとなんか恥ずかしくなってしまった。


「愛梨の家って、なんつーか、きちっとしてる感じ?俺とか紹介したら親が卒倒したりしない?」


 なんか今になって、不安になってきた。俺自身は真面目にやってるつもりだが、見た目こんなんだし。自分の見た目は気に入ってるが、それが足を引っ張る可能性を少し考えてしまう。


「あははは、卒倒とかありえないって!うちもそんな全然きちっとしてる感じでもないし、お金持ちってわけでもないし、お母さんのノリだって春香さんと全然変わんないから!頭良くて、カッコいい彼氏できたって言ってあるし、めっちゃイケメンじゃん、良かったね~みたいな反応だと思うよ?」


 う~ん。それならまぁいいか。でも愛梨の家にいくなら髪を黒くしてもいいかもな。なんて少し考えこんでいると、愛梨が俺の手を握ってきた。


「えっと、ルナくんが真面目に勉強してるのも、筋トレとか頑張ってて、弟とか妹の面倒たくさんみてるのも今日でたくさんわかったよ?だからさ、見た目とかさ、そんなの全然気にしなくていいんだよ?私もこんなすごい彼氏ができたよって、親に自慢したいくらいなんだから!」


 ピンポイントで俺の気持ちをついてくるその言葉に、少しだけ泣きそうになった。

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