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NTRゲー悪役みたいな外見してるけど、これマジでそういう世界じゃないよね?  作者: 小野千春


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第29話 佐藤健太視点

 愛梨が一ノ瀬ルナと付き合ったらしい、という噂は一瞬の内に広がった。まぁ広がるまえから知ってたが。キャンプファイヤーの時に一ノ瀬の腕に抱きついて幸せそうに頬を染めた愛梨を見てしまったからだ。


「くそっ」と思わず悪態をつく。


 中学の時は俺の周りにいたのに、高校に入ってから明らかに変わった。愛梨は一ノ瀬と出会ってから明らかにおかしくなった。高校に入ってすぐに一ノ瀬の方に行こうとする事が何度もあった。


 入学2日目にして先輩を脅しつけた後だ。正直ヤバすぎる奴が教室にいて、最悪な気分だった。こいつにイジメられたら高校生活終わる、と一目で思わせるような風貌をしているし、実際先輩に対しての態度も怖すぎた。


 あれで速攻で孤立した一ノ瀬に愛梨はなぜか話しかけようとしていた。俺等の中ではやばそうな人ってなってるのに、そんな事ないって、大丈夫大丈夫と言って教室内で話しかけようとする。


 一ノ瀬には愛梨を近づかせては絶対ダメだ。本能が危険を訴えてくる。あのバキバキの身体に、傷が入った顔。いかにもって感じだ。確実に寝取られる。


 一ノ瀬の噂は、本人に聞こえないところで皆がしていた。二中らしいと聞き、他のクラスの同じ二中だったという女子にどんな奴だったかを聞きに行った。どうせクソ荒れてた不良だったとかいうに決まってる。その話を愛梨にして、目を覚ましてもらおうという算段だ。


 二中らしい、という女子を紹介してもらった。バカが多くて有名な二中にしては大人しそうな女子だ。話しかけてきた俺に、怪訝そうな顔をしている。


「あのさ、ちょっといい?俺2組なんだけどさ、一ノ瀬ルナって中学の時どんな奴だったの」


「え?えっと、ルナくんのこと?なんで?」


 なんで、じゃなくて。ただ聞いてるだけだろ。ていうか、ルナくん、か。


「いや~、ただ聞きたいだけ。教室で目立ってるし、見た目怖そうだからどんな人なのかなってさ」


「あぁ…、まぁ確かにね。見た目怖いよね」と少し笑う。


「でも全然いい人だよ。」


 求めている答えとは違う。


「へ、へ~。どんな感じの人なの?」


「ん~意外と優しいし、あ、ルナくんの1個下にね、双子の姉弟がいるんだけど。めっちゃ可愛いかんじの!その子達のことすごい大事にしてるって有名だったよ!」


 そんな事聞きたいわけじゃないんだよ。大体不良が自分の家族にだけは甘いとかあるあるだろ。ちょっといい事してるだけで、普通の奴がいい事した時よりも評価されるんだ。


「そうなんだ。なんか、悪い噂とかなかったの?」


「ん~、1年の時とかは結構荒れてたかなぁ。先輩と喧嘩とか結構してたし。あとは結構夜遊びしてる、みたいな話とか?でも、全然だよ。私も2年の時だけクラス一緒だったけど、真面目なのになんか面白い人だったよ」


 こいつに聞いても無駄そうだ。女だから、イケメンへの採点が甘いんだろう。適当に礼を言って、他の二中の奴を探しに行く。


 もう一人、男子生徒が見つかったので声を掛ける。真面目そうな男だ。


「あのさ、ちょっといい?俺2組なんだけどさ、一ノ瀬ルナって中学の時どんな奴だったの」


「あ、えっと何?てか誰?ルナくんのこと聞きたいの?」


「2組の佐藤って言うんだけどさ、いや、一ノ瀬って教室で目立ってるし、見た目怖そうだからどんな人なのかと思ってさぁ。話しかけてもいいのかな、みたいな?」


 適当にごまかす。


「あぁ…そんな感じなんだ。いや、全然話しかけてもいいと思うよ。結構普通の人だよ」


 こいつもかよ。


「いやさ、なんか怖くてさ。なんか悪い噂とかなかったの?」


「悪い噂?うーん、まぁないこともないけど…。でも陰でそういう話したくないんだけど。ルナくんのおかげで中学の時は結構平和だったし」


 ないこともないなら、それを聞きたいんだよ。てか平和ってなにしたんだよ。


「いやまぁこれから話しかける上で一応しっておきたいんだよね。普通の人なんでしょ?それなら話のネタにもなるかもだしさ?」


「ん~まぁいいけど、所詮噂だよ?」と言ってしばらく考え込んだ後、口を開いた。


「うーん、例えば…、一部の人が言ってたけどルナくんに対しては教師もなにも言えなくて、それで割と好き放題してるとかは言われてたかなぁ。あとは…、人の女をとったとか。僕はあんまり、その、陽キャみたいなタイプじゃないから詳しくはないけどね」


 そうそう、そういう話が聞きたかった。


「まぁでも噂だよ?見た目が怖いし目立つ人だったから色々言われてたけど、普通に悪い人じゃないっていうのも知られてたよ」


「あぁ~そうなんだ、ありがと。んじゃちょっと話しかけてみようかな」


 適当に礼を言って離れる。他にも元二中の奴を探したがバカ中だしあんまり数がいない。それ以上見つからなかったので切り上げた。


 聞いた噂や流れていた噂、もともとあった与太話などを適当に曲解して愛梨達に伝える。愛梨は眉をひそめて聞いていたので、これでもう大丈夫なはずだと思っていた。思っていたのに。


 ある朝、愛梨が一ノ瀬に挨拶をしていた。どこで接点があったんだ?学校では話しかけたりしないようにずっと見張っていたのに。学校の外かなにかで接点があったのか?愛梨に確認すると、公園でランニングしている時に会ったという。話しかけられたのか?と聞くと私から話しかけたよ、と言われた。


 あれだけ言ったのに。危ない奴だから近寄るなと言っておいたのに何話しかけてんだよ!イライラしてくる。愛梨はこういうところがある。下心をだして近づいてくる男にはガードが硬いが、俺以外の男子にも普通に話しかけたりするし、優奈達みたいに俺にべったりって感じでもない。愛梨だけ家の方面も違うし、いつも見ていられるわけではない。


 幼馴染でもないし、俺が家にいる時にゲームで繋がってるわけでもない。中学の時からなんとなく仲良くなっただけだ。


 しょうがない。まぁ話しかけたりするだけならいいだろうと思っていると、これからは時間が合えば一ノ瀬と一緒に帰るとか言い出した。家が近いらしい。


 意味がわからない。昨日今日で何でそんなに仲良くなってんだよ。あんなのに近づいたらどうせすぐヤられて、ヤられた女はなんか知らんけどそいつとのセックスにはまっておかしくなるに決まってるのに。


 そのうち昼飯も一ノ瀬と食べるようになった。楠木マコトもそこで一緒に食べている。楠木も大概気に入らない。俺の周りの女に手を出そうとしてきた奴だ。中学の時に全員にフラレていたみじめな奴の癖に、あまり気にしていない風に強がっている。で、なんかそんな奴と一ノ瀬と、あとはなんか陰の薄そうな2人と飯を食っている。


 まぁ、しょうがない。愛梨はもうしょうがない。学校の外でも会っているらしいし、もう何をされているか分からない。もう処女じゃないかもしれない。というか多分どうせヤられてる。もういいや、あいつはもういい。


 1人離れていくくらいならもういい。そう思っていた。


 芹那はその日、朝から機嫌が悪かった。登校中も何か考えている。何があったのか聞いても、「兄貴が色々あってさ。一応、何があったか今日確認できたら話す」としか言わない。よく分からないし面倒くさいからほっておいたら、昼休みに一ノ瀬に何事か話しかけて教室を出ていった。


 嫌な予感しかしない。なにか脅されているのか?


 しばらくして一ノ瀬も出ていった。気になりすぎて優奈達に一言断ってから、後をつけると屋上の方に上がっていく。屋上ならまだいい、結構人の目があるはずだから芹那を襲ったりとかそういうことはしないだろう。


 扉に隠れて屋上を覗き見る。芹那が一ノ瀬になにか怒鳴っているのが聞こえてきた。やっぱりなにかあったんだ。しばらく見ていると一ノ瀬が芹那に近づいて何事かささやくと、こちらに戻ってきた。


 慌てて教室に戻る。授業が終わって芹那に一ノ瀬となにがあったか聞いても朝と同じ答えだ。更には今日は一緒に帰れない、ときた。嫌な予感はしているがしばらく教室に残るというので優奈達と一緒に下校した。


 次の日、登校中に昨日何があったのか聞いてみた。


「で?結局昨日なにがあったの?一ノ瀬になんか脅されてんじゃないのか?」


「いや、全然勘違いだった。ルナくんは特に何も悪いことしてないよ。なにがあったかは…えっと完全に身内の恥だからあんまり言いたくないかな」


「はぁ?」


 なんでいつの間にかルナくん呼びになってんだよ!あいつの見た目のせいで考えたくない想像しかできない。もう寝取られてるんじゃないかとか考えてしまう。あんな奴はすぐ脅してヤるに決まってる。で、ヤったら女はどうせすぐにあいつの虜みたいになるんだ。


 しつこく何があったか聞き出すと、詳しい内容は話してくれなかったがどうやら芹那の兄貴がなんかやらかして、それで一ノ瀬が仲介してやったとか、そういう話らしい。


 意味が分からない。お前の兄貴もなんか脅されてるんじゃねーの?といったら面倒くさそうな顔をされた。


「あ、てかさ。ごめんけど今度の合宿さ、愛梨と一緒にルナくんの班に入るね」


 はぁ?意味がわからなすぎて吐き気がしてきた。そこからは喧嘩みたいになった。しばらく考え直すように説得したが、その日の内にメンバーを提出されたらしく、手遅れだった。マジで訳が分からない。なんでこうなるんだよ。


 で、俺らの班には楠木マコトが入ってきた。締め切りギリギリまで男を入れないように粘っていたが、もともと周囲とあまり関係値を築けていなかったせいで入ってくれる女もおらず、結局楠木が入ることになった。マジで最悪だ。1人足りないなら俺が入ろうか?と優奈に話しかけているのを見た時はクソいらついた。


 憂鬱な気分になりながら中間を終えて結果が配られた。174位。240人くらいいるから、まぁそこまで悪くはないだろう。必死こいて勉強してない割にはそこそこなほうだ。順位表が張り出されたが、どうせのってないからと優奈と話をしていると、見に行った芹那が戻ってきた。


「見た?やばくない?ルナくん6位だった」


 はぁ?意味分からん。マジでそんなに頭いいのか?超人?


「はぁ?どうせカンニングかなんかしてるんでしょ」


 まぁカンニングは無理だろう。前の席のやつが1位とかじゃないと6位はとれないだろうが、とにかく適当に一ノ瀬を貶める言葉を選んだ。


 芹那は「はぁ、まぁいいや」と言って離れていった。


 ミスった。流石にこれは言葉を間違えたのは分かる。だがなんて言えばいいんだ?

「へ~一ノ瀬くんすごいんだねぇ」とでも言えってか?無理だしイヤに決まってる。


 愛梨が一ノ瀬のところに行ってから全ての歯車が狂ったように感じる。中学のときも俺の周りの女に手を出そうとしてくる男はうようよいたが、彼女達がそれになびくことはなかったので安心していた。だが愛梨が一ノ瀬に近づいて今度は芹那だ。明確に危機感を覚える。


 キャンプファイヤーで愛梨と付き合ったと知った後、合宿の風呂場であいつのアレを見た時に絶望した。デカすぎる。俺のアレとは違いすぎる。どうせ女なんてデカければデカいほどいいんだ。愛梨はもう絶対もどってこない。


 芹那も何をされているか分かったもんじゃない。一ノ瀬だけじゃなく、楠木マコトも一緒にいる。もし本当に何かされていたら脳破壊なんてもんじゃない。


 あいつらにヤられるくらいなら、もう告白してしまおうか?でももし仮に芹那を選ぶと優奈達はどうなる?他の男と付き合うのか?


 どうすればいいのか分からなくなってきた。

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