第27話
夕飯も終わってしばらく自由時間をだらだら過ごした後はキャンプファイヤーだ。それなりの大きさで四角く薪が組んである。
なんかこれ見てると中学時代思い出す。
うちの中学は、文化祭の後に校庭でキャンプファイヤーをやっていた。ちょうどこんな感じで組んであったところに矢野とかと一緒に爆竹を箱ごと10箱くらい隠し入れていた。薪に火がついてしばらくするとパンパン鳴りまくって、皆がきゃあきゃあ言ってるのが楽しかった。
「あれ、ルナくん1人?」
夕方の涼しい中、昔の思い出に浸っていると愛梨に声をかけられた。
「大輝が眠そうにしてたから、あれが始まるまで適当に暇つぶししてるとこ」
キャンプファイヤーを指す。あと1時間くらいある。
「私も一緒していい?」
「もちろん、いいよ」
2人で適当に雑談しながら施設周りを散策する。
「夜さ、瞳ちゃん告白すると思う?」
「まぁ、無理でしょ。無理というかそもそもしたいのかも分からんけど」
昼間から感じていたが、これはあれか。そろそろお前も告ってこいよってことか。敏感系な俺はなんとなく空気を察する。
愛梨のことは好きだ。だが中学生の時とは多少価値観が変わった。前は好きならすぐ付き合いたいとなっていたが、今はこの付き合う前の青春っぽい時間も楽しい。でも、さすがにもう限界っぽいな。
「確かに。ちょっとふざけて囃し立てすぎちゃったかな」
「まぁ冗談って分かってるだろうしいいでしょ」
俺達と同じ様に散策でもしているのか、同級生の男女とすれ違う。
「あの人達、付き合ってるのかな?」
「そういう雰囲気だったし、そうなんじゃない?」
適当な2人で座れそうな段差があったので並んで腰掛ける。
「ルナくんはさ、好きな人いないの?」
不意打ちをかけてきた。分かってて聞いてるのか、不安になって聞いてきてるのか分からない。お前だよ、と答えたらどんな反応をするのか見てみたいが、なんかそう答えてそのまま付き合うってのも味気ない。せめてキャンプファイヤーの時とかに言うのが、それっぽいんじゃないか?
愛梨はどことなく不安そうな表情でじっとこちらを見ている。
「いるよ」
「どんな人?」
日もほぼ落ちてきた夕暮れの中、遠くで同じ様に散策しているグループを見ながら、なんと答えるか考える。
「一緒にいて楽しくて、前向きな努力家で、めっちゃ可愛い人。昔は地味だったって言ってたけど、それだけ努力したんだなって。そういうとこも好きかな」
ほぼお前だよって言ってるに等しい答えになってしまった。こういう時に卒なくこなすのが俺のキャラのはずだが、上手くやれてるか不安になってくる。少し気恥ずかしくてしばらく遠くを眺めていたが反応がないので隣を見ると膝を抱えて俯いている。
これは恥ずかしがってるな。
「愛梨のことだよ」
と言って頬を撫でると、ばっと立ち上がった。
「えっと、じゃあ、後でちゃんと言ってね!」
そういうと愛梨は合宿所に走り去っていく。後で告ってねってことか?こういう時に逃げる癖があるよなこいつ、という感想がふと頭に浮かんだ。
時間になったので集合場所に集まる。愛梨は時が来るまで俺と話をする気がなさそうなので大輝と適当に雑談する。
誰がいつ決めたのか、点火する係の生徒とかもいるようで謎の儀式のあと火が灯された。出し物やらのレクリエーションが行われる。全体参加のレクリエーションが終わったタイミングに言うのがいいだろう。
大体のレクリエーションが終わった。生徒も各々バラバラに行動しているし頃合いだろう。
「愛梨、ちょっといいか?」
手を握って話しかける。これから何が起こるかは分かってないはずもなく、小さな声で、「うん、いいよ?」といってついてきた。
成り行きで告白することになってしまったな。高級なレストランに連れていく金なんてもってないし、せいぜい夜景でも見に行った時に言おうと思ってたんだが、まぁこういうのも青春っぽくて悪くない。
集団から離れて木陰の薄暗がりの中で向かい合う。愛梨の顔が遠く焚き火と月明かりに照らされていつもよりずっと大人っぽく、息をのむほど綺麗に見える。
少し遠くでは学生達の騒ぐ声が聞こえているが、ここはひどく静かだ。結果なんて分かっているのに緊張してきた。
大輝達みたいに俺から近づいたわけじゃない。公園で向こうから話しかけてきてくれて、性格は最高にいい。勉強も部活も頑張っていて素直に尊敬できる相手だ。しかもとびっきり可愛い。こんなの好きにならない訳が無い。
愛梨は多分、俺がどれだけ愛梨の事が好きか知らないだろう。まぁあまり態度にださないようにしてたしな。
改めて言う。
「一緒にいて、すぐに好きになったよ。愛梨の頑張ってるところも、楽しいところも、可愛らしいところも全部好きだ。付き合ってくれ」
告げた瞬間、愛梨の大きな瞳からぽろぽろと涙がこぼれ落ちた。溢れる想いを抑えきれないように愛梨が体に手を回して抱きついてくる。
「うん!うんっ…!」
その小さな肩の震えと、伝わってくる温もりが愛おしくて、そっと何度も唇を重ねた。
「ずっと憧れてたんだよ?ルナくんのこと」
「ずっとって、まだ出会って2ヶ月弱しか経ってねーじゃん」
なんだか大げさな表現にちょっと笑ってしまう。
「ま、いいじゃん。とにかくずっと見てたの!」
涙を拭いながら少し笑う愛梨の表情に、見惚れてしまう。しばらくそのまま強く抱きしめ合ったあと、愛梨がゆっくりと身体を離した。
「そろそろ戻ろっ!」
愛梨が俺の腕に抱きついたまま、キャンプファイヤーに戻る。周りの視線が集中しているが愛梨はそのままだ。チラッと顔をみると照れてるのか真っ赤だ。
担任の教師が苦笑している。こんな堂々と見せつける奴もそういないんだろう。すみません、とペコっと頭を下げると、シッシと手で追い払われた。
芹那達の方に向かうとこっちを向いて目を見開いた。
「え、うわっマジ!その感じ、付き合ったってこと?」
「そ、さっき告ってOKもらったとこ」
「うわ~2人でいなくなるからそうかなとは思ってたけど…でも、良かったね。おめでと!」
大輝とか、周りの奴らも祝福してくれる。
瞳がなんか不貞腐れている。どした?と声をかけると怒られた。
「さんざん昼に煽っておいて、自分たちは付き合いました~ってなに!私が隼人のとこに行ったのに誰も何もいってくれないし!」
やばい。完全に忘れていた。
「あぁ…、OKもらえた?」
「告ってないから!まぁ仲直りはしてきたよ。てか、まぁ2人ともおめでと」
頬をかきながら祝福してくれる。優しい奴だ。
「めっちゃお似合いだよホント!記念にさ、2人の写真とろうよ!」
芹那も楽しそうだ。
「んじゃ、撮るね!」




