第23話
「ん?今なんでもするって…!何でもするっていったよね!」
何故か愛梨がはしゃいでいる。よく分からんがとてもうれしそうだ。そのままドリンクバーの方に向かっていくとアイスティーを持ってきて、「おまたせ」と何故かギャルに渡している。
とりあえず、愛梨の奇行はいったん無視してギャルの方を見る。頭を下げているギャルを様子からまぁもういいかって気分になってきた。
「はぁ、んじゃ貸し1つってことで」
別に今すぐこいつにして欲しいことなんかないしな。一発ヤラしてと言うわけにもいかんだろう。
「ホントごめん。てかうちの兄貴めっちゃダサいやん…」
しょげている。ダサいのは否定できない。
「それはそう。矢野も大概な奴だから運が悪かったってのもあるけどな」
「まぁ、芹那ちゃんの事情聞いたら勘違いしてもしょうがないんじゃない?」
落ち着いてきた愛梨が答える。
「そうだよ!兄貴が正直に何があったか言ってたらむしろ感謝してたよ、てか感謝と面倒事に巻き込んで謝罪してたから!」
「にしても、最初からあんな喧嘩腰でくるのは違うと思うけどね~。普通なにがあったのか聞いてくるもんじゃねえの」
チクッとトゲを刺す。
「だって一ノ瀬は相当なワルで中学の時は後輩イジメたりとか女遊びとかやばかったみたいな話聞いてたし…」
でたでたその噂。
「あん?誰に聞いたんだよそんな嘘」
ギャルに聞くと黙り込んだ。言いづらそうである。
「えっと…多分だけど、健太くん?」
「うん…」
でしょうね。だってこのギャル大体佐藤といるし。
「まぁ佐藤が俺の悪口言いたくなる気持ちは理解できるけどな」
2人は黙っている。年齢1桁レベルの理解力でもないんだろうし、こいつらも分かってるだろう。
「周りの女に俺の悪評ふきこんで、取られないように必死なんでしょ」
ストレートな物言いにギャルもさすがに居心地が悪そうだ。確かこいつと佐藤は幼馴染のはずだ。これ以上言うと陰口みたいになるしやめとくか。
「ま、いいけどね」
と流した。とりあえず小腹が減ってきたし呼び出しボタンを押してポテトフライを頼む。
「あー芹那ちゃんにはちょっと申し訳ないけど、面白かった。やっぱルナくんといると退屈しないね!」
もうこの話は終わりって流れを察した愛梨が雰囲気を変えるように言う。
「2人ってさ、なんでそんなに仲良くなったの?」
ギャルが馴れ初めを聞いてきた。
「家近くてランニング中にたまたま会って、そこから一緒に走ったり一緒に帰ったりしてるかんじ」
うんうんと愛梨が同意する。
「どっちから話しかけたの?」
「わたし!」
と愛梨が軽く手を挙げる。
「へぇ~意外…でもないかも。なんかいいね。2人すごいお似合いって感じするし」
と言うとはぁ~、とため息をついた。愛梨がうれしそうに机の下で俺の手をツンツンしてきた。
「お前って佐藤の事が好きなの?」
なんとなく聞いてみる。さっき多少なり庇う様子を見せていたし。
「お前じゃなくて…、あっと、今日のことはごめんなさい。えっと芹那でいいよ。あたしもルナくんでいい?」
別にいいけど質問に答えて欲しい。再度聞いてみる。
「いいよ。んで芹那って佐藤の事が好きなの?」
「ん、う~ん。好き、だけど…。好きだったに近いかも。最近良くわかんないんだよね…」
あんな奴の何が良いの?とは聞かない。幼馴染補正もあるだろうし。
「なになに、なにがあったの?」
恋バナ大好きJKは興味津々だ。
「愛梨がうちらからちょっと離れていきそうじゃん?いや、別に愛梨が悪いわけじゃなくて、ルナくんが気になってるんだろうな~って分かってるし。そしたら健太がものすごい不機嫌になっててさ…」
まぁそうなる気持ちは理解できるが表に出すなよ、と思ってしまう。
「佐藤って愛梨の事が好きだったの?」
「いや、それも分かんなくてさ~。前までそんな素振り無かったし」
ハーレムエンドが崩れそうだから苛ついてるんかな。リアルでそんなん無理っしょ、と思うけど、年頃の男子だししょうがないのか?まぁこれも俺の想像だ。
「まぁ何となく理由は分かってるんだよね、だから好きか分かんなくなってきたっていうか…。中学の頃はもうちょっと違ったんだけどね~」
自分たちが所有物やトロフィーの様に扱われてる感でもしたのかね。内心を知ることはできないので想像するしかないが。
なんか雰囲気暗くなってきたし話かえるか。自分で聞いといて申し訳ないが、他人の恋愛話は好きだが恋愛相談みたいなのはちょっとダルい。
やってきたポテトフライをつまみながら話を変える。芹那にもポテトどうぞ、と手でジェスチャーしておく。
「ほ~ん、まぁなるようになるんじゃね?てか中間明けのオリエンテーション合宿の班って愛梨どうする?4~5人でグループ作れって話だから佐藤達と組むの?」
「ん~ルナくんは大輝くんと瞳ちゃんと組むんだよね?3人なら私そっちにいこうかな!」
正直嬉しい。
「いいね、嬉しいよ。あいつらも知らん奴が入ってくるより喜んでくれるだろうし」
愛梨が来ないならマコトを入れる予定だったから瞳の逆ハーレムは崩壊だ。そんなの望んでないだろうが。
「あのさ…、あたしもそっち行って良い?4人ならまだ1人いけるでしょ?」
え、マジで。いやなんで?
「私はいいけど…なんで?普通に健太くん達と組むと思ったんだけど」
と言うと愛梨は俺の腕に抱きついて「シャーッ」と猫のように威嚇をした。冗談なんだろうが可愛い。
「いやいや、違うって!あたしもそろそろさ、健太達とばっかりつるんで他に友達いないのどうかなって思ってたし…。折角高校で新しい人達と友達なれるのにもったいないかなって思っててさ」
至極真っ当な理由だ。ただし佐藤の気持ちは考慮されてないが。まぁでもそういう意思は尊重されるべきだろう。
「まぁ、いいんじゃね?じゃあメンバー明日委員長に提出しとくわ」
佐藤のハーレムから2人目を引き抜いたとか言われそうだな。
その後は適当に雑談をして解散することになった。最後に「今日ホントごめんね」といって芹那は帰っていく。
「うーむ」と愛梨は腕を組んで顎に手を当て、去っていく芹那の背中を見ながら何かを考えている。なんとなく考えていることは分かったので、手をつなぎ帰路につく。色々と話しているとすぐに愛梨のタワマンに着いた。去り際に少し不安そうな顔を浮かべて愛梨は振り向いた。
「芹那ちゃんのこと好きになったらダメだよ!」
彼女でもないのにそんなことを言ってくるのが愛らしい。軽く抱きしめる。こちらを見上げてきたのでそのまま頬と頬を軽く合わせて耳元で「大丈夫」と低音でささやいてやると「ひゃあっ」という声とともに彼女は身体を離した。
「ま、またねっ」
愛梨は顔を真赤にして走り去っていく。
昨日の再放送を見ているようで少し笑ってしまった。




