第13話 高橋愛梨視点
私は小学生の頃からルナくんを知っている。
明るく、楽しく、ちょっと怖いけどやんちゃでカッコいい。喧嘩も運動も負けなしで、誰も彼には逆らえない。そして1個下に可愛い双子の姉弟がいる。なんなら家も知ってる。
小学生の頃の私はクラスの端っこで目立たない、根暗な眼鏡の女の子だった。あまりにも自分と違う、太陽のように目立つ彼を教室の隅っこからよく見ていた。彼の存在は私の憧れだ。あんな風に、自由気ままに、自信満々に、生きてみたい。
中学に入る時に私は変わった。小学生の時から変わりたいと思ってたけど、勇気が出なかった。メガネをコンタクトにして髪も整えて、運動部に入って明るく人とコミュニケーションをとるようになった。私なりの変わり方だ。
私は徐々にモテるようになっていった。健太くんたちと仲良くなったのもそのころだ。こんな美少女たちと一緒にいれば、自分もさらに変われるかなって。
高校生になって彼と再会したときに思った。何も変わってない。
いや、成長してないって意味じゃなくてさ、空気感というか。
見た目はより近づきづらくなっている。そして彼に絡んだ先輩への対処も正直怖かった。だけど、周りからなんと言われるかも気にせず、根暗っぽい子達と昼食をとっている。どうみても彼とつるむような人たちじゃないのに。
クラスのカーストとか、グループとか、そういうのをちっとも気にしてないんだろうなって。
やっぱなんていうか、かっこいい。ああいう風に生きてみたい。
私が今から孤高の女不良みたいになるのは性格的に無理だけど。でも小学生の頃よりは、彼に近づけたんじゃないかな?小学生の頃よりは、彼に近づいていいんじゃないかな?
だから公園でランニングする彼に話しかけてみた。彼はべらぼうに目立つから、前から走ってるのは知っていた。
まぁ案の定覚えられてなかった。名前を言ったらあーお前か、ってなるかと思ったけど、全く覚えられてなかった。
まぁね、想定の範囲内だよ。可愛いって言ってくれたからまぁ良しとするよ。
小学校一緒なんだよ私達、とは言わない。なんていうか昔の私が恥ずかしいし。変わった自分を見て欲しい。
いつか、小学校の時の卒業アルバムを一緒に見る機会なんかがあれば、これ私だよ、なんて言ってみてもいいかもしれないけど。変わったねって褒めて欲しいところもあるから。
知ってるけど、聞かないのは不自然だったから彼の傷についても聞いてみた。
正直ちょっと笑いそうになった。まだあの嘘つきつづけてるんだって。小学校の同学年の子達は多分皆知ってる。彼が弟を庇ったわけではなく、ぼーっと自転車を漕いでるときに轢かれた傷だって。だって親子で目撃した同級生がいたから。
まぁ小学生男子が恥ずかしがってついたお茶目な嘘だ。もはや引き返せないんだろうし、そういうところがなんかギャップがあって可愛い。ちなみに、その嘘を指摘できるような勇気のある人はいなかった。
彼と話してて思う。これ私に気があるんじゃないかなって。というか彼は私をアリだと思っているのは間違いない。可愛いから一緒に走ろうなんて、ナシの子に言うセリフじゃないはずだし。
というかこんなストレートなセリフを真顔で言ってくるのもすごい。どんな恋愛経験してるんだろう。中学生の時に告白してきた男子とぜんぜん違う。
自己肯定感が高まる。以前はこうなりたいと思っていた人に、そんな風に言われるまでに変われた自分が誇らしくなる。
ちょうどナンパがうっとおしかったし、ちょうど良かった。彼といたらまた何か変われるかな?




