第11話
「へーそうだったんだ。噂と全然ちがうね。名誉の負傷じゃん、なんかカッコいいね!」
噂とやらがどんなものかは想像がつく。どうせ喧嘩しまくってできた傷とか言われてるんだろう。俺のしょうもない嘘をまんまと信じて名誉の負傷とまで言ってくれたが、あまりそこを誇りたくもないのでさらっと流す。
「んーまぁそうかもね。てかさ、その噂っていうのがなんなのか知らないけど、だいたい想像がつくからさ。事故ってできた傷で、喧嘩で刃物とかで切られたわけじゃないって広めといてくんない?」
「あはは、まさにそんな感じの噂だったよ。でも大人しそうな子達とも楽しそうに昼ご飯一緒してるし、そういう人じゃないんじゃないかなと思ってたんだよね。うん、誤解がとけるように広めとくよ!」
まぁそういう人じゃないこともないが、言う必要もないことだ。
「マジか、助かるよ。見た目であれこれ言われるのしんどいからさ…」
自分の弱さというのを少し演出してみる。別に見た目でどうこう言われるのは慣れてるし自分の見た目は最高に気に入っている。
「いや、まぁ見た目だけじゃないけどね!この前、先輩たちにめっちゃカマしてたじゃん!あたしもあの時はマジでヤバイ人いるじゃんってなったよ?」
あぁそういえばそんなこともあったな。完全に忘れてたからなんか逆効果になったかも。えーと、なんて言えばいいんだこれ。
「いやあれはさ、フリオ達が絡んできたからしょうがなくっていうか?あそこで引いたらパシリにされるかもわかんないし?リンチ受けるかもしれないし?自己防衛的な?」
若干焦って早口で疑問文を並べてしまう。言いながら自分がそんな目にあうわけないと分かっているがつい言っちゃう。
「あははは、ルナくんがパシられてるの想像するとなんかウケるね。絶対ありえなさすぎて。てかなにフリオって」
なんか笑っている。物怖じしない奴だな。ちなみにフリオとは不良の振りをする男で、振り男。半端な不良を指す。うちの中学限定の言葉かもしれんが。まぁいいや。こんなしょうもない話より、未来につながる話をしよう。
「まぁいいじゃん。てかよくここで走ってんの?俺ん家すぐそこなんだけど初めてみたし」
できれば一緒に運動する仲になりたい。1人で走るより可愛い女と走りたいわな。ついでに家の場所を探ってみる。ちょいきしょいか?まぁいいか。
「んーたまに?今はまだ部活も本格的に始まってないし、体動かしたいからさ。あたしの家もすぐそこだよ!」
と、すぐそこのタワマンを指さした。マジですぐそこじゃん。なんなら俺の家より近いじゃん。てか気軽に俺みたいな奴に家の場所を教えるのは危機感なさすぎちゃうかコイツ。まぁタワマンだけど。
「ちかっ!俺の家より近いな。んじゃさ、これからランニングする時一緒に走らね?俺もどうせなら1人で走るより可愛い子と走りたいし。」
ド直球で言ってみる。何が、んじゃさ、か分からないがとりあえず言ってみる。こんだけはっきり言ったらイヤなら断りづらいだろうから少し申し訳ないが。
「えっ、いやそんな可愛くとかないって!…え、てかめっちゃありがたいかも。てかマジで言ってる?」
「うん、全然マジだよ」
マジですよ。なにがありがたいかは知らんけど。
「てかさ、あたしもお願いしようかと思ってたんだよね。いやね、なんか最近あたしが走り終わるたびに男が声かけてきたり、後ろをずっと追いかけて来る人とかもいるんだよね。ルナくんといたら絶対そういう人こなさそうだから。あ、でも全然時間が合う時だけでいいからね!」
長台詞を聞きながら思う。マジかよ。僥倖すぎる。男避けにこれ以上ないほどの自分の外見に心から感謝をする。父さん母さんありがとう、こんな見た目に俺を産んでくれて。
まぁでも愛梨の見た目じゃしょうがないか。誘蛾灯のように男が惹きつけられるのは自明の理だ。ちなみに俺もその中の1人だ。でもこんな風な理由なら、あんまぐいぐいいくのもちょっとやめたほうがいいか。すでにがっつりいっちゃったけど。
当然了承して、クラスのグループから連絡先を抽出してメッセを送り合う。これで次からお互いランニングする時は誘いあえるようになった。ついでに学校でも話しかけてねと言ってみたが眩しい笑顔でもちろんといってくれた。
愛梨をタワマンに送り届けてから足取り軽く帰路につく。てかもうこれほとんどフラグ立ってるだろ。明るい彼女と教室で話せるなら、これからはよりクラスに馴染みやすくなるだろうし、いいことしかない。
やっぱ外にでて活動するのはいいことだ。万年引きこもってゲームばっかのチビ共もこれからランニングさせるのも悪くないかもな。




