01話 神様は緊急避難警報と共に降臨する
キラキラ輝く星々が辺りを照らし、何もないただの入れ物に意味を持たせる。
ここは宇宙。何の意味も持たない空の入れ物。
そんな宇宙の、地球から人類が観測できないほど離れた場所に彼女は居た。
「う〜ん。初配信はどんな感じにしようかな? 出来るだけ印象に残るような物にしたいんだけど…」
少女は自撮り棒を片手に悩んでいた。
「無責任だけど、『なるようになれ!』って感じでもう配信しちゃおうか!」
少女は配信開始ボタンを押した。
「やっほー! 今日から配信を始める神人配信者のEDENだよ。今日はこの天空城から地球へと繋がる門をくぐって、とある学校の入学式受付をしようと思うよ! じゃあさっそく、行ってみようか!」
そうして少女は、門をくぐり地上へと降り立った。
これが後に語られる伝説の配信者の幕開けとなる。
♢
春…それは出会いと別れの季節。
心地のよい春風と共に種を運び、じっと芽が出るのを待つ。そして、芽が出ると広大な青い空と共に祝福の風を送る。
今日は入学式。
私立、花青歌高校は新入生を迎える為に入学式の受付をしていた。
僕の名前は剱崎優夜。
何をやっても普通。
良く出会う人々に「普通だね」と言われる僕は、もはや普通なのが僕の取り柄だと思っている。
今は入学式受付に並んでいる。
「次の方!」
「はい!」
「え〜と、剱崎優夜くんね。じゃあ、このパンフレットに書いてあるとおりに従って、音楽室の隣の待合室に行ってね。校舎案内のページは、最後の方に書いてあるからそれを見て行動してね。」
「分かりました。」
僕は手に持ったパンフレットを見ながら待合室へと向かった。
私立花青歌高校は国内でも有数な名門高校。
なんと本校舎の大きさだけで東京ドームが丸々一個入るほど大きい。
なので、学校自体が迷宮のようになっている。
「次はこっちかな。」
僕は迷宮のような学校内を歩いた。
しばらく歩いていると入学式の待合室前に着いた。
「ここか。」
きっと中には僕と同じで、新しい生活に持ち焦がれた新入生達が居るんだ。
そう思い、扉を開けようとした。
パァァァァァァァ!
「な…何? 眩しい。」
突然外から白い光が差し込んだ。
あまりの眩しさに目を空けていられず、僕は腕で目を押さえていた。
光が収まり少しすると外が騒がしくなった。
あまりの騒ぎに、僕は心配と少しの好奇心で外に出て見てみることにした。
それが僕の平穏な日常の終わりだった。
♢
ここはとある国の観測室。
彼らは今、この瞬間に異常なエネルギー波を観測した。
「なんだ…これ、これが解き放たれれば世界は…」
「どうした、何があった?」
「分かりません。ただ、日本の首都で異常なエネルギー反応を計測しました。」
「異常なエネルギー? 核じゃないのか?」
「いえ…核とは比べ程もない程強力なエネルギーです。おそらく我が国にも多大な影響を受けるでしょう。最悪の場合、地球は生命が住める星ではなくなるかもしれません。どうしますか?」
「何…核以上のエネルギーだと それに地球が…今すぐに日本の防衛省に連絡しろ。そして我が国の軍を出すことも視野に入れろ。」
「分かりました。」
「日本に核以上のエネルギーだと? 一体日本で何が起こってるんだ……」
♢
外に出てみると異様な光景に驚いた。
「何あれ…空に巨大な…門?」
学校の近くの空には白色の装飾がされた巨大な門があり、それを見て腰を抜かしている人や、逃げている人や、動画を撮っている人がいた。
そんな異様な門は近づき難い雰囲気を放っていた。
僕がその門を見上げ、棒になっていると先生が慌てて走ってきた。
「皆さん、今すぐ体育館に避難しましょう。ここは危険です。私達教師に従って行動してください。」
僕達は先生の指示に従って避難した。
この学校の避難の仕方は分からなかったが、先生達が分かりやすく丁寧に誘導してくれたので、僕達は問題なく避難することができた。
♢
体育館に避難すると綺麗な飾りが付けられていた。
本来ならばそれらは新入生を迎える為に付けられた綺麗な飾りだったが、まるで意味を成さなかった。
その飾りを見た僕は胸が苦しめられた。
そして体育館では空気が重く、先生や新入生の顔は死んでいた。
段々と、外のパトカーや救急車や消防車のサイレンの音が増えていく。凄い量だ。
そして体育館の上からはヘリや戦闘機の音が聞こえた。おそらく自衛隊だろう。
そして遂には、jアラートが発令された。
『ウゥゥゥーーーーン、ゥワァァァーーーーン』
「航空攻撃情報。航空攻撃情報。当地域に航空攻撃の可能性があります。屋内に避難し、テレビ・ラジオをつけてください。」
サイレンが鳴り終わると先生達が話していた。
「どうしますか? ここも危険かもしれません。今のうちに別の場所へ避難しないと、巻き込まれる可能性が高いですよ。」
「いや、もし避難している最中にもしあの門が落下したら、場合によって全員死ぬぞ。助かる命も助からなくなる。」
先生達が話していると体育館の扉が開いた。
バンッ
「花青歌高校の皆さんに伝えます! 私達は自衛隊です! 現在、この地域には航空攻撃の恐れがあります! この建物は危険なため、これより全員で丸井地下駐車場へ避難を開始します!」
「繰り返します! 今すぐ丸井地下駐車場へ移動します! 荷物は最小限にして、列を乱さずに隊員の誘導に従ってください! 窓際やガラスのそばを避け、姿勢を低くして移動してください! 今すぐに行動します。急いでください!」
自衛隊の方々が助けに来てくれた。
僕達は自衛隊の方の指示に従って避難を開始した。
♢
僕達は体育館を出て姿勢を低くしながら避難していた。
入学式受付の前を通ると、先程までは綺麗だった受付は荒んでいた。
僕はこの時、『人生が終わった』と思っていた。
パァァァァァァァ
そう思っていた僕を前に門は再度光り出す。
「キャァァォァァ」
「何だ…何が起こった。」
「総員警戒態勢!」
光が収まり目を開けると、僕の目の前には先ほどまでは無かった筈の光の階段があった。
「うわぁぁぁぁぁ」
僕は思わず腰を引いた。
コツ…コツ…コツ…コツ
ゆっくりと地面を歩くような音が聞こえてくる。
光の階段を見上げると制服を着た少女が降りてきていた。
僕の前に自衛隊の方々が立ち塞がる。
彼らの手は震えていた。
「よし! ちゃんと撮れてるね! じゃあさっそく、入学式の受付をしてみたいと思いま〜す!」
少女は自撮り棒を片手に降りてきた。
「あれ、君達どうしたの? そんなに大人数で集まって…それに、何でみんなで私を見るの? 私の格好がそんなにおかしかった?」
『こいつは何を言ってるんだ。』
正直、僕はそう思った。
「あの…貴方は何様でここに来ましたか…」
自衛官の1人が少女に聞いた。
「私は今日、この学校に入学しに来たんだ♪ それに首席だから代表挨拶もあるし…とっても楽しみなんだ! でも見たところ入学式も入学受付もやってないよね? もしかして日にち間違えちゃった?」
この時、この場の誰もが思った。
『こいつ頭おかしいんじゃないか』と。
「あの…貴方は一体何者なんですか?」
先程この少女に質問した自衛官が再度尋ねる。
「あ〜、その前にちょっと待っててね!」
少女はそう言うと自撮り棒に付けていたスマホを持ち、画面を見ながら喋りだした。
「はい! じゃあ今日はここまでということで、そろそろお開きにしようと思います! 今日のEDENSヒントは16! じゃあ、またね〜。バイバ〜イ!」
少女は手を振りながらスマホを押した。
先程まで少女は配信をしていたらしい。
「じゃあ、さっそく自己紹介するね!」
僕は生唾を飲んだ。
「私の名前は刹那零無。この度、地球にやってきた神だよ。地球には人間の存続選別の為に来たんだ! だから人間の皆さんは私に全てを見せて、楽しませてね〜! 期待してるぞ〜!」
それが少女と僕達の出会いだった。
最後までお読みいただきありがとうございます!前日譚『零無創世』や活動報告もあわせてお楽しみいただけると嬉しいです。
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