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規格外の幼女サバイバル  作者: 沼口ちるの


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第七話 無表情少女、はじめての換金で規格外を叩き出す

城塞都市の門をくぐるのは、思いのほか簡単だった。

この三年間の遠隔モニタリングで、入城審査の手順や相場は完全に把握している。通行料の銅貨三枚がない私は、森で拾った一番小さくてくすんだ魔石(パチンコ玉サイズ)を門番に渡し、あっさりと中に入ることができた。


「さて、まずは換金だな」


私は石畳の道を歩きながら、周囲を観察した。

活気ある市場、行き交う馬車、武装した冒険者たち。どれも遠くから見ていた景色だが、実際にその場に立つと音や匂いが新鮮だ。


……おっと、いけない。少しでも感動すればデバフが解除されて、私が歩いた跡が更地になってしまう。私はすかさず心に分厚い氷を張り巡らせ、表情筋を死滅させた。


目指すのは冒険者ギルド……ではなく、商業区にある魔石の買取所だ。

ギルドに登録してクエストを受けるのも王道だが、いかんせん今の私は無一文。当面の宿代と生活費を稼ぐのが先決である。


裏通りにある、少し薄暗い『ドワーフの買取屋』の扉を開けた。

カウンターの奥では、髭もじゃのドワーフの店主がルーペを目に当てて何かを鑑定していた。


「……買取を頼みたい」

「ん? おう、いらっしゃい。見ない顔だな、お嬢ちゃん。魔石の買取かい?」


店主は私の年齢(十四歳)と質素なローブ姿を見て、少し侮ったような、それでいて呆れたような視線を向けてきた。無理もない。駆け出しの小娘が持ってくる魔石なんて、スライムやゴブリンの小石程度だと相場が決まっているのだ。


「ああ。森で少し拾ったんだが」


私は麻袋をカウンターに置き、中身をごろりと転がし出した。

ゴトッ、ゴロンッ。


カウンターの上に転がったのは、リンゴサイズの真っ赤な魔石、ソフトボール大の紫色の魔石、そしてスイカほどもある純白の魔石など、計五個。

どれも私がこの三年間、森で襲いかかってきた魔物たちをデコピンで沈めた際に、なんとなく綺麗だから拾っておいたものだ。


「……」

「……」


店主の動きがピタリと止まった。

ルーペが目からポロリと落ちて、カウンターに転がった。


「……おい、お嬢ちゃん。なんだい、このガラス玉は。よくできてるが、うちじゃイタズラには付き合えねえぞ」

「イタズラではない。三日前にそこの森で仕留めた、少しデカいトカゲから取れたものだ」

「デカいトカゲって……おい、嘘だろ。この純度、このサイズ……まさか、Sランク指定の『紅蓮竜』の魔石か!? こっちは『災厄狼』のだし、こ、このデカい白いのなんて、伝説の『白銀巨獣』じゃねえか!!」


店主は両手で頭を抱え、ひっくり返るような声で叫んだ。


(えっ、あの口から火を吹いてたトカゲ、ドラゴンだったの!? うそ、ただの大きいイグアナかと思ってた! ていうか白いのなんて、ただのちょっとデカい犬じゃん!)


内心では冷や汗を滝のように流し、激しくツッコミを入れていた私だが、表面上は一片の感情も読み取れない能面を維持していた。

ここで驚いて平常心を失えば、デバフが切れてこの買取所ごと街が消し飛ぶからだ。


「……で、いくらになる?」


私はあくまで冷徹に、声音の高低すら変えずに尋ねた。


「い、いくらって……お嬢ちゃん、これ全部買い取ったら、うちの店が傾くどころか、国庫の予算が動くぞ!? ど、どこのギルドのトップランカーだあんた!?」

「ただの、通りすがりのサバイバーだ」


私は瞬き一つせず、店主を見据えた。


この日、城塞都市の裏社会で『底知れぬ実力を持つ無表情の少女』の噂が静かに広まり始めたことを、私はまだ知らない。

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