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規格外の幼女サバイバル  作者: 沼口ちるの


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第四十一話 魔界の門と、究極の「高耐久アスレチック」

「……ま、待て! 追ってくるな! 来るなぁぁぁっ!!」


二百万倍の「トントン」で魂まで折れかけた古の魔人は、もはやプライドなど微塵も残っていなかった。彼は最後の魔力を振り絞り、空間を無理やり抉じ開けた。

その先にあるのは、真なる魔族が住まう極限の地――「真魔界」。


「逃げるな。まだ計測の途中だ」


私が無表情で手を伸ばした瞬間、魔人は吸い込まれるように門の向こうへ消えた。

……逃がすわけにはいかない。あんなに頑丈な「標準サンプル」は、そう簡単に見つからないのだ。私はカイルたちが「ユイちゃん、行っちゃダメだ!」と叫ぶのも聞かず、迷わずその闇へと飛び込んだ。


門を抜けた先。そこは、どす黒い空と赤い月が浮かぶ、禍々しい世界だった。

だが、地面に降り立った瞬間、私はこれまでにない「違和感」を覚えた。


(……ほう。この地面、硬いな)


私はいつもの能面で、足元の黒い岩盤を軽く踏んでみた。

驚いたことに、クレーターができない。いや、正確には「直径数メートル」で収まっている。この国の地盤なら、今の動作だけで一帯が消滅していたはずだ。


「……ふん。ようやく帰ってきたぞ。ここは真魔界、かつて天界族と我ら魔族が数万年争った戦場……。その激戦に耐えるため、太古の聖域を魔改造した『神話級の耐久度』を持つ大地よ!」


魔人がボロボロの体で、勝ち誇ったように笑った。

なるほど。聖域をベースにした超高密度の大地。それは私にとって、この上ない吉報だった。


(……素晴らしい。ここなら、あのおじいちゃん(老師)に気を使って出せなかった、本当の『準備運動』ができるかもしれない)


私は内心で歓喜し、脳内のダイヤルを一気に跳ね上げた。

二百万倍。五百万倍。そして、ついに大台の**「一千万倍」**へ。


ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッ!!!


設定を確定させた瞬間、私の身体から溢れ出した魔圧が、真魔界の重力そのものを書き換えた。

空に浮かんでいた赤い月が、私の引力に引かれて数センチこちらへズレる。大気がプラズマ化し、周囲の魔族たちが戦う前に「存在の重み」だけで地面にめり込んでいく。


「な……な、何だこのプレッシャーは!? 一千万倍だと!? 正気か、この娘はぁぁぁっ!!」


魔人が絶叫する中、私はその場で軽く「ストレッチ」を始めた。

腕を伸ばし、肩を回す。


ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!


私が肩を鳴らしただけで、音速を超えた衝撃波が真魔界の地平線を駆け抜け、遠くに見えていた「魔王城」らしき建物の尖塔が、風圧だけで粉々に消し飛んだ。


(……いい。すごくいい! 腕を回しても世界が壊れない。これが『本物の運動』なんだな)


私は能面の裏で、かつてない開放感に浸っていた。

どうやら私は、知らないうちに神か何かの領域にいたらしいが、そんなことはどうでもいい。

今はただ、この「頑丈なアスレチック」で、溜まりに溜まった運動不足を解消することに全力を尽くすだけだ。


「……さて。魔人。一千万倍の『鬼ごっこ』を始めようか」


「ひ、ひぃぃぃぃっ! 助けてくれぇぇ! 魔王様ぁぁぁっ!!」


世界を滅ぼすはずの魔人が、半泣きで魔界の奥へと逃げていく。

私はその背中を、ようやく見つけた「壊れないおもちゃ」を愛でるような(無表情な)目で追いかけ、再び大地を蹴った。


一千万倍の「普通」が、ついに魔界の生態系を根底から破壊し始めた瞬間だった。

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