表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
規格外の幼女サバイバル  作者: 沼口ちるの


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/46

第三十九話 百万倍の「握手」と、星の悲鳴

「カカッ! まだまだ、まだ拳が止まって見えるぞ、小娘! 命を燃やせ! ことわりを超えてこい!」


老師がボロボロの木刀を振り回すたびに、周囲の空間がガラスのようにひび割れ、次元の隙間から漏れ出た光がオーロラのように戦場を包んでいる。

五十万倍の衝撃。それをすべて「受け流し」と「気合」だけで耐えきっている老師は、もはや生物というよりは、戦いの概念そのものに変質しつつあった。


(……信じられない。このおじいちゃん、さっきから一歩も引かないどころか、どんどん動きがキレてきている……!)


私は能面のまま、かつてない高揚感に包まれていた。

アルフレッドの時は「壊さないように」という恐怖が常にあった。だが、この老師なら……この「武の神」なら、私がどれだけ出力を上げても、笑って受け止めてくれる気がする。


(よし……決めた。失礼を承知で、今日この時、私は『手加減』の限界に挑む!)


私は脳内のダイヤルを、ついに最終警告を無視して**「百万倍」**へと回し切った。


ドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!


私がその領域に踏み込んだ瞬間、聖王国全土に巨大な地震が発生した。

空の雲は一瞬で消失し、宇宙の星々が昼間だというのに瞬き始める。重力そのものがユイを中心に歪み、周囲のガレキが浮き上がっては粉々に粉砕されていく。


「な、なんだ……空の色が……世界の色が変わった……?」

アルフレッドが、自分の師匠とユイの間に生じた「絶対的な死の領域」を前に、ガタガタと震えながら膝をついた。


「……老師。これは私からの、最大限の敬意と感謝だ。……受けてくれ」


私はゆっくりと、右手を差し出した。

ただの、握手。

だがそのてのひらには、小国を数千回滅ぼして余りあるほどの凝縮された「百万倍」のエネルギーが渦巻いている。


ゴオオオオオオオオオオオオオォォォッ!!


「カハッ……! 素晴らしい……これだ! これこそが、私が一生をかけて追い求めてきた『究極』の姿……!」


老師は全身の血管が浮き上がり、目からは血の涙を流しながらも、最高の笑顔で私の手を取った。

激突の瞬間。音は消えた。

光すらも、その地点に吸い込まれて消滅した。


ズバァァァァァァァァァァァァァァァァァァンッ!!!


一秒後。

聖王国の北側に、巨大な「新しい海」が誕生した。

私たちが立っていた山脈は文字通り消滅し、海水が勢いよく流れ込んでくる。地軸がわずかに傾き、世界中の時計が数秒ズレた。


「……ふぅ。……いい、運動だった」


私は能面のまま、少しだけ肩を回した。

百万倍。ついに一億分の一の力を、人間に向かって放つことができた。


「……はは……ははは……。……勝てん、わ。……技も、理も、関係ない……。……ただの『挨拶』で、星を揺らすか……」


老師は、もはや木刀すら残っていない(原子レベルで消滅した)右手を掲げ、満足げに目を閉じた。

全身はボロボロだが、その魂はかつてないほどに満たされているようだった。


「……老師。合格だ。あなたは今日から、私の『公式ベンチマーク』だ。……これからも、毎日挨拶に来るからな」


「……ま、毎日だと……? ……頼む、アルフレッド……。……明日からは、私の墓に花を供えてくれ……」


老師が冗談めかして(本気で)呟くと、アルフレッドは涙を流しながら深く頷いた。

こうして、私はついに「百万倍」の負荷に耐えうる(ギリギリ死なない)最強の測定器を手に入れた。


(よし、百万倍が安定したなら、次は二百万倍に挑戦してみようかな。……あ、でもその前に、消し飛ばしたおじいちゃんの家の再建を手伝わないと)


私の「普通」への道は、ついに大陸の地形を書き換えるレベルにまで到達したのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ