≒デート――8
しつこいやつらだな! さっさと諦めろよ!
男たちの往生際の悪さに、思わず舌打ちしそうになる。
苛立ちを募らせるなか、男たちが望愛を口説いてきた。
「そいつで満足できるの? そんな格好してんだから、男好きなんでしょ? きみ」
「俺たちテクニシャンだし、そいつより上手いと思うよー?」
俺は足を止めた。
「……ノリくん?」
戸惑ったように、不安がるように、望愛が俺を見上げてくる。
この状況での最善は、男たちと取り合わず、諦めるのを待つことだ。
この状況での最悪は、男たちに突っかかり、波風を立てることだ。
わかっている。
それでも、許せなかった。
「……一緒にするな」
「あ? なんか言った?」
「聞こえねぇんだけどー?」
馬鹿にするような声で、男たちが聞き返してくる。
振り返って、射貫くような目で男たちを睨み付けた。
「望愛を、お前らみたいな下半身で物事考える発情野郎と、一緒にするんじゃねぇっつったんだ!」
そう。許せなかったのだ。
望愛を、こんな軽薄なやつらと同類扱いされることが。尻軽みたいに言われることが。
当然ながら、俺の態度と言動は、男たちの神経を逆撫でした。
男たちの顔つきが凶悪そうに歪む。悪意と敵意がむき出しになる。
「は? なにお前?」
「っ!」
男のひとりが、荒っぽく胸ぐらを掴んできた。
俺の息が詰まる。
「調子乗ってんじゃねぇよ」
「逆らっていいと思ってんの? 痛い目に遭っちゃうよー?」
暴力行為も辞さない旨をほのめかされて、ギクリと身がすくむ。ズシリと胃が重くなる。
けれど、望愛を貶めるようなやつらに屈したくはない。恐怖を意地で押さえ込み、男たちを睨み返した。
反抗的な俺の態度に、男たちが激昂する。
「んだよ、その目は!」
胸ぐらを掴んでいる男が、拳を振り上げた。
男の拳が俺を襲う――寸前。
「や、やめてください!!」
悲鳴混じりに望愛が叫んだ。
望愛の叫び声で周囲のひとたちが騒ぎに気づいたらしく、にわかに辺りがざわめきだす。
男が舌打ちして、突き飛ばすように俺を解放した。
「命拾いしたな」
忌々しげに吐き捨てて、男たちが去っていく。この状況で俺を脅すのは、分が悪いと判断したのだろう。なんとか命拾いしたようだ。
俺は詰まっていた息を吐き出す。手が小刻みに震え、冷や汗で背中が湿っていた。
頭に血が上っていたとは言え、俺も無茶をしたものだよな。まあ、望愛を侮辱されて、黙っていられるはずがないんだけどさ。
自分の蛮勇っぷりに苦笑が漏れてしまう。
そんな俺を、泣き出しそうな目で望愛が見上げてきた。
「だ、大丈夫、ノリくん!?」
「ああ。助けるつもりが助けられちゃったな」
俺を心配する望愛は、顔面蒼白だ。
これ以上望愛を不安がらせたくなくて、平静を取り繕い、おどけるように肩をすくめてみせる。
しかし、望愛の表情は曇ったままだ。
「ごめんね。あんな目に遭わせちゃって……」
「なんで望愛が謝るんだよ? 元凶はナンパ野郎どもだし、騒ぎを大きくしたのは俺だ。望愛はなにも悪くないんだぞ?」
「でも……」
慰めようと試みるも、依然として望愛の顔色は晴れない。眉を八の字にして、涙ぐんでいる。
せっかく楽しい時間だったのに、台無しじゃねぇか。
内心で男たちに愚痴りながら、俺は望愛を励まし続けた。
とてもじゃないけど楽しめる雰囲気ではないので、今日はここでお開きとなった。
精神状態を考慮して、俺は望愛を家まで送り届ける。
望愛の元気が戻ることは、ついぞなかった。




