≒デート――7
下着を購入したあとも、俺たちはファッションビルを見て回った。
ウインドウショッピングをしながら、望愛と談笑する。
そんななか、ふと気づいた。
なんだか、望愛の笑顔が弱々しいような……?
よくよく観察してみると、足取りも少し覚束ないし、会話にも生返事が混じっているように感じる。
もしかして、疲れているのか?
思えば、今日の望愛ははしゃぎっぱなしだ。体力に乏しいのにあれだけはしゃげば、疲れが出てもおかしくない。
「望愛、一旦休憩するか?」
「え? だ、大丈夫だよ?」
俺の気遣いに対し、望愛が笑顔で遠慮する。しかし、その表情は明らかに愛想笑いだ。
おそらく、楽しい雰囲気に水を差したくないのだろう。だからこそ、誤魔化そうとしているのだろう。
変な気を回しやがって、まったく。
呆れ半分、和み半分といった気持ちで、俺は苦笑する。
「本当に大丈夫ならいいんだが、無理する必要はないんだぞ? 俺相手に、余計な気を回さなくていいんだからな?」
「……じゃあ、お言葉に甘えようかな」
やはり、気を回していたらしい。降参するように眉を寝かせた望愛が、胸を撫で下ろすみたいに笑った。
近くのベンチに並んで腰を下ろすと、「ふぅ」と望愛が息をつく。
パタパタと手で顔を仰ぐ望愛。その肌は、ジットリと汗ばんでいた。
「悪い。もっと早く気づいてやるべきだったな」
「なんでノリくんが謝るの? 黙ってたのはあたしなんだよ?」
顔を曇らせると、望愛が苦笑する。
「むしろ、気づいてくれてありがとう。おかげで助かったよ」
「そうか」
柔らかく目を細める望愛を見て、俺は安堵の息をついた。
「ノリくんの言うとおり、無理するのはよくないね。汗、いっぱい掻いちゃった」
「水分補給したほうがいいかもな。スポドリでも買ってこようか?」
「お願いできる?」
「わかった。待ってろ」
望愛に頷きを返して、自販機を探しに向かった。
スポドリを購入して戻ってくると、二〇代前半と思しきふたりの男に、望愛が絡まれていた。
「いいだろ? 俺らと遊ぼうぜ?」
「や……その、あ、あたし……」
「退屈させないからさー」
「う、うぅ……」
標本に載りそうなくらい、いかにもなナンパだ。
男たちは、下心が見え透いたような目で望愛の体を舐っている。
断ることもあしらうこともできず、望愛は弱々しく震えていた。男ふたりに絡まれているのだから、怯えるのも無理はない。
「ひとりにするんじゃなかったな」
顔をしかめて呟く。
望愛は、一〇〇人に訊いたら漏れなく全員が認めるくらい美少女だ。おまけに、今日の格好は非常に扇情的。実際に、道行く多くの男性が目を奪われていた。
望愛がナンパされる可能性は予測できたはずなのだ。自分の迂闊さを呪わずにいられない。
いや、反省は後回しだ。いまは望愛を助けることが最優先。
頭を切り替えて、足を踏み出す。
相手は俺より年上。加えて人数も上だ。正直、恐怖はある。
それでも、望愛を放っておくなんてもってのほかだ。
望愛のもとまで真っ直ぐ進み、男たちとのあいだに割り込む。
「すみません。その子、俺の連れなんで」
「あっ、ノ、ノリくん」
「悪い、待たせたな」
自然に、かつ、速やかに、望愛の手を取って連れ出す。
連れがいるとわかれば、男たちも流石に諦めるだろう。
そう思っていたが、見通しが甘かった。
「待った待った。話は終わってないんだけど?」
「勝手に連れていかないでくれるー?」
諦めることなく、男たちはあとをつけ回してきたのだ。よほど望愛を自分たちのものにしたいらしい。




