≒デート――6
やむを得ずついてきた俺は、望愛が試着を終えるのを待っていた。
ランジェリーショップでひとりにされたこの状況は、想像の一〇倍は気まずい。ほかの客の視線が気になってしかたがない。変な汗を掻いてしまう。
おまけに、背後の試着室から布擦れの音が聞こえてくるのだから、堪ったものじゃない。カーテン一枚隔てた先で望愛が着替えていると考えたら、否応なしに鼓動が速まる。
頼む、望愛。早く試着を終わらせてくれ……!
唇をへの字にしながら、心のなかで望愛に希う。
そんな俺の願いが通じたのか、望愛が話しかけてきた。
「ね、ねえ、ノリくん?」
「なんだ、望愛? 試着、終わったか?」
「その、ね? ちょっと、問題が発生しまして……」
「問題?」
要領を得ない返答に眉をひそめていると、シャッ、とカーテンが開かれる音がした。
反射的に振り返り、俺は思い知る。
望愛が話しかけてきたのは、試着が終わったからではないのだと。俺の願いが通じたわけではないのだと。
「っ!?」
これでもかと目を見開いて、俺は絶句する。
試着室から上半身を覗かせた望愛が、下着姿だったからだ。
真っ白な肌をくまなく色づかせた望愛は、俺が選んだ下着をつけている。その下着はパツンパツンに張り詰め、いまにも弾け飛びそうになっていた。ぎゅうぎゅうに詰め込まれた胸は、それでも収まりきらず、むにゅりと下着からはみ出している。
下着は清楚なはずなのに、その光景は淫靡なことこの上ない。気づかないうちに、俺はゴクリと喉を鳴らしていた。
酸素を求める金魚みたいにパクパクと口を開け閉めしていると、恥じ入るように視線をさまよわせながら、望愛が事情を説明してきた。
「み、見ての通り、サイズが合ってないみたいで……」
「そそそそうか!」
「最近、胸回りが窮屈だったし、また大きくなっちゃったのかも……計測したいから、店員さんを呼んでもらえる?」
「わ、わかった! わかったから、試着室に戻ってくれ!」
あまりの衝撃に注意することすらできず、壊れた水飲み鳥みたいにコクコクと頷く。
「よろしくね?」と望愛がカーテンを閉めたところで、俺はへなへなと崩れ落ちた。
「あ、あんな格好で出てくるなよ……」
息止めチャレンジのあとみたいに盛大に息をつき、弱々しく愚痴を吐く。
バクバクと狂ったように鼓動が急いている。『一生のうちに心臓が脈打つ回数は決まっている』という話を聞いたことがあるが、もし真実なら、俺の寿命はかなり縮んでいるだろう。
本当に驚いた。下着姿で出てくるとは、思いもしなかった。
さらに言えば、
「まだ育ってるのかよ」
そこも驚愕すべき点だ。
望愛の胸は現時点でも非常に大きい。望愛を除いて、あれほど大きな胸の持ち主は、俺の周りにいない。
それほど大きいにもかかわらず、まだ成長の余地を残しているなんて、とんでもない話だ。望愛はどこまで上り詰めるのだろうか?
望愛のポテンシャルに、仰天を通り超して畏怖すら覚えた。




