幕間:準備フェーズ
金曜日の夜、あたしは自分の部屋で、姿見とにらめっこしていた。明日のお出かけに着ていく、服装を選んでいるのだ。
「これは色気が足りないし……こっちは、色の組み合わせがよくないし……」
「うーん……」と唸りながら、両手に持ったお洋服を、自分の体に交互に宛がう。
かれこれ二時間、あーでもないこーでもないと、あたしは悩んでいた。床やベッドの上には、試着したお洋服が散乱している。
ただのお出かけで、ここまで身だしなみに迷うことはないだろう。すなわち、あたしにとって明日のお出かけは、特別な意味を持っているということ。
あたしは、明日のお出かけを、ノリくんとのデートと考えているのだ。
洋服選びを一旦中断して、溜息をつく。
「どうして、あんなこと付け加えちゃったんだろうなぁ……」
先日のノリくんとのやり取りを、あたしは振り返る。
――そ、その……再会してから、お休みの日にお出かけしたことないでしょ? それで!
あんなことを言うつもりはなかった。言う必要はなかった。
むしろ、言わなかったほうが、『このお出かけには特別な意味があるんじゃないか?』とノリくんが意識してくれたかもしれない。あの言葉は、蛇足そのものだったのだ。
それでも口にしてしまったのには、理由がある。
もし、デートのつもりでお出かけに誘っていると、ノリくんに勘づかれたら?
そう考えたら、心臓がバクバクして、体がカッカして、頭がグルグルして、どうにかなってしまいそうだったのだ。
だから、ついつい誤魔化すような言葉を口にしてしまった。あたしの本心に気づかれないように。
ようするに、あたしは日和ったのだ。
「本当、意気地なしだよね、あたし」
もう一度、大きく溜息をついて――ブンブンと頭を振る。
「いまさら悔やんでもしかたないよね。そんな暇があるなら、ノリくんを悩殺するために、最高のコーディネートを見つけ出さなきゃ」
気持ちを切り替えたあたしは、洋服選びを再開した。




