功には禄を――4
中間テストが終わり、その翌日から次々とテストが返却されてきた。
いまのところ、望愛は赤点を取っていない。
そして、三日後の一限目、最後となる数学のテストが返ってきた。
授業後の休み時間、テストの結果を確認するため、俺は望愛の席に向かう。
「どうだった?」
「ぶいっ」
尋ねる俺に、望愛がピースサインを作りながらテストを見せてきた。テストの点数は赤点以上。見事、全教科で赤点回避に成功だ。
「やったな、望愛!」
「ありがとう、ノリくん! ノリくんが力を貸してくれたおかげだね♪」
「それもあるだろうけど、やっぱり望愛が頑張ったからだよ」
「えへへへ」
俺が褒めると、日だまりに咲くタンポポみたいに、望愛がほわっと微笑んだ。
「それでさ? 赤点を回避できたから、約束通り、ご褒美をもらえるんだよね?」
上目遣いで望愛が訊いてくる。ご褒美に言及されたことで、俺の胸中に緊張が発生した。
「あ、ああ、いいぞ。改めて確認しておくが、不健全なお願いはダメだからな」
「うん。わかってる」
念を押す俺に、コクリと頷きを返す望愛。
ドギマギするなか、望愛は一旦うつむき、ちらりとこちらを見上げ、ひとつ深呼吸してから、お願いの内容を口にした。
「次のお休み、一緒にお出かけしてもらえないかな?」
「お出かけ?」
思っていたよりも普通のお願いだった。拍子抜けした気分で、俺は目をしばたたかせる。
そんな俺をジッと見つめながら、望愛は頬を赤らめていた。まるで、告白の返事を待つように。さながら、恋する乙女のように。
望愛の様子を目にして、ある可能性が頭を過る。
赤らんだ頬。なにかを期待するような眼差し。それに、『休日』に『男女』で『お出かけ』となると――
も、もしかして、望愛の言う『お出かけ』って、『デート』のことなんじゃないか?
ドキドキと胸が高鳴る。カアッと顔が熱くなる。
望愛が再び口を開いた。
「そ、その……再会してから、お休みの日にお出かけしたことないでしょ? それで!」
「あ、ああ! そういうことか!」
望愛の付け加えに、上擦った声で相槌を打つ。どうやら、『お出かけ』にそれ以上の意味はないらしい。
あ、危ねぇ! デートと勘違いして赤っ恥を掻くところだった!
こっそり胸を撫で下ろすなか、望愛が改めて訊いてくる。
「あたしのお願い、聞いてくれる?」
期待と不安をない交ぜにしたような表情で、望愛が返事を待っている。
俺の答えは決まっていた。
「もちろん、構わないぞ」
「やった♪ 楽しみにしてるね♪」
弾けるような笑顔を見せて、望愛がピョンピョンと飛び跳ねる。
テンションが上がりすぎた小型犬みたいだなあ。
そんな感想を抱きながら、俺は頬を緩めた。




