功には禄を――3
テスト勉強をはじめてから一時間が経過した。
「集中が途切れてきたみたいだな。休憩するか」
「うん……」
提案すると、申し訳なさそうに望愛がへにょんと眉尻を下げる。
落ち込むのもしかたないと思う。なにしろ、休憩を取るのはこれで三度目なのだ。
休憩を取るのは悪いことではないが、取り過ぎるのはよくない。それは、サボっているのとほとんど変わらないのだから。
教わっている立場なのに集中できていない。そのことを、望愛は後ろめたく感じているのだろう。
「ごめんね、ノリくん。休んでばかりで……」
「気にするな。そもそも、苦手なことを頑張るのは大変なんだからな」
「けど、あたしからお願いしたことなのに……」
励まそうと試みるが、望愛の顔色は晴れない。相変わらずしゅんとしたまま、溜息をついている。
望愛の気持ちはわかるし、集中できるに越したことはないんだよなあ……。
落ち込んだ状態では勉強に身が入らないし、そうなると、ますます罪悪感を抱えてしまうだろう。負のスパイラルに陥らないためにも、対策を立てたほうがいい。
「ふむ……」と腕組みをして――俺は一計を案じた。
「そうだ。赤点を回避できたら、望愛にご褒美をあげよう」
「ご褒美?」
「ああ。見返りがあれば、苦手なことでも頑張れるんじゃないかと思うんだ」
「たしかに、そうかも」
合点がいったように、望愛がコクコクと頷く。
いい反応だ。ご褒美作戦は成功みたいだな。
手応えを感じて、俺は頬を緩めた。
「望愛はどんなご褒美がほしいんだ?」
「そうだなぁ……」
尋ねると、口元に指を当てて望愛が考え込む。
ややあって、望愛が顔を上げた。
「じゃあ、ひとつお願いを聞いてほしいんだけど、いいかな?」
「俺にできることなら構わないぞ? ……あっ! 言っておくけど、不健全なお願いはダメだからな!」
「うん!」
ご褒美を誘惑に悪用されたら困るので、俺は慌てて付け足す。
約束を取り付けた望愛は、やる気満々といったふうに眉を立てた。
「よーし! 頑張るぞーっ!」
そこからの望愛は段違いの集中力を発揮し、最後まで休憩なしでやりきった。よほど俺にお願いを聞いてほしいらしい。
不健全なお願いはダメと釘を刺しておいたが……少し不安だな。




