表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/65

功には禄を――2

 その日の放課後、俺と望愛は図書室を訪れた。隣り合って座り、早速テスト勉強をはじめる。


「たしか、マズいのは理数系だったよな?」

「うん」

「なら、数学からやるか」

「よろしくお願いします!」


 望愛が力強く返事をした。


 数学の問題集とノートを取り出し、ふたりしてテーブルに広げる。


「まず聞いておきたいんだが、どこが苦手なのか自分でわかるか? 弱点を知っておいたほうが、対策を練りやすいんだけど」

「うーん……全体的に、公式の使い方が苦手かな? どの問題にどの公式を使えばいいのか、判断しづらくて……」

「なるほどな」


 望愛の弱点を把握した俺は、勉強の方針を定める。


「じゃあ、公式の使い方(そこ)を重点的にやっていくか。問題を解きながら教えていくから、見ててくれ」

「わかった!」


 気合を入れるように両手をグーにして、望愛が頷いた。


「最初はこの問題な。ここではたすきがけの公式を使うんだけど、やり方は――」

「ふむふむ」


 例となる問題を解いていると、ノートをのぞき込むように望愛が身を乗り出す。


 むにゅ


「っ!?」


 その際、豊満すぎる胸の膨らみが、のしかかるように俺の右前腕に押し付けられた。包み込まれるような柔らかさと、ズッシリとした重量感に、思わず息をのむ。


 目を白黒させながら視線を下ろすと、深すぎる胸の谷間が視界に飛び込んできた。肌色の大渓谷を目の当たりにして、頭が沸騰しそうになる。


 こ、こんなときまで誘惑してくるのかよ!? 状況がわかってるのか!? 赤点取っちゃうかもしれないんだろ!? 誘惑(そこ)に注ぐ情熱、勉強に向けてくれませんかねぇ!?


 焦りと呆れが入り混じった気分で、はぁ、と溜息をつく。


「なあ、望愛? こういうときくらい、真面目にできないか?」

「ふぇ?」


 注意すると、ポカンとした顔で望愛がこちらを見た。


「ちゃんと勉強してくれないと困るんだが?」

「えっ? あ、えと……ご、ごめんね! もっと集中するから!」


 叱られた望愛は、どこか戸惑った様子でノートに視線を戻す。


 俺の手元をジッと見つめる望愛。その横顔は真剣そのものだ。


 望愛のリアクションが思っていたものと違ったので、今度はこちらがポカンとしてしまう。


 あれ? もしかして、望愛に誘惑するつもりはなかったのか? 胸が当たってしまったことも、谷間が見えてしまったことも、ただの偶然なのか? 勉強に集中していて、ほかに気を回す余裕がなかったから起きたことなのか?


 だとしたら――


 真面目にできてないのは俺のほうじゃねぇか!


 望愛に濡れ衣を着せてしまった罪悪感と、(よこしま)な目で見てしまった自分への、憤りがこみ上げる。


 贖罪(しょくざい)と叱責の意味合いを込めて、自分の頬を思いっきりビンタした。


(かぁつ)っ!!」


 パァン!


「ぴゃっ!?」


 響いた打擲音(ちょうちゃくおん)に驚いたのか、望愛がビクッと肩を跳ねさせる。


 弾かれるように振り向いた望愛は、俺の顔を見て目を丸くした。


「ど、どうしたの、ノリくん!? ほっぺに紅葉(もみじ)みたいな跡がついてるよ!?」

「驚かせて悪い。大丈夫だ」

「そ、それならいいんだけど……」

「ただ、自分が汚らわしい存在に思えただけだから」

「本当に大丈夫なの!?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ