功には禄を――2
その日の放課後、俺と望愛は図書室を訪れた。隣り合って座り、早速テスト勉強をはじめる。
「たしか、マズいのは理数系だったよな?」
「うん」
「なら、数学からやるか」
「よろしくお願いします!」
望愛が力強く返事をした。
数学の問題集とノートを取り出し、ふたりしてテーブルに広げる。
「まず聞いておきたいんだが、どこが苦手なのか自分でわかるか? 弱点を知っておいたほうが、対策を練りやすいんだけど」
「うーん……全体的に、公式の使い方が苦手かな? どの問題にどの公式を使えばいいのか、判断しづらくて……」
「なるほどな」
望愛の弱点を把握した俺は、勉強の方針を定める。
「じゃあ、公式の使い方を重点的にやっていくか。問題を解きながら教えていくから、見ててくれ」
「わかった!」
気合を入れるように両手をグーにして、望愛が頷いた。
「最初はこの問題な。ここではたすきがけの公式を使うんだけど、やり方は――」
「ふむふむ」
例となる問題を解いていると、ノートをのぞき込むように望愛が身を乗り出す。
むにゅ
「っ!?」
その際、豊満すぎる胸の膨らみが、のしかかるように俺の右前腕に押し付けられた。包み込まれるような柔らかさと、ズッシリとした重量感に、思わず息をのむ。
目を白黒させながら視線を下ろすと、深すぎる胸の谷間が視界に飛び込んできた。肌色の大渓谷を目の当たりにして、頭が沸騰しそうになる。
こ、こんなときまで誘惑してくるのかよ!? 状況がわかってるのか!? 赤点取っちゃうかもしれないんだろ!? 誘惑に注ぐ情熱、勉強に向けてくれませんかねぇ!?
焦りと呆れが入り混じった気分で、はぁ、と溜息をつく。
「なあ、望愛? こういうときくらい、真面目にできないか?」
「ふぇ?」
注意すると、ポカンとした顔で望愛がこちらを見た。
「ちゃんと勉強してくれないと困るんだが?」
「えっ? あ、えと……ご、ごめんね! もっと集中するから!」
叱られた望愛は、どこか戸惑った様子でノートに視線を戻す。
俺の手元をジッと見つめる望愛。その横顔は真剣そのものだ。
望愛のリアクションが思っていたものと違ったので、今度はこちらがポカンとしてしまう。
あれ? もしかして、望愛に誘惑するつもりはなかったのか? 胸が当たってしまったことも、谷間が見えてしまったことも、ただの偶然なのか? 勉強に集中していて、ほかに気を回す余裕がなかったから起きたことなのか?
だとしたら――
真面目にできてないのは俺のほうじゃねぇか!
望愛に濡れ衣を着せてしまった罪悪感と、邪な目で見てしまった自分への、憤りがこみ上げる。
贖罪と叱責の意味合いを込めて、自分の頬を思いっきりビンタした。
「喝っ!!」
パァン!
「ぴゃっ!?」
響いた打擲音に驚いたのか、望愛がビクッと肩を跳ねさせる。
弾かれるように振り向いた望愛は、俺の顔を見て目を丸くした。
「ど、どうしたの、ノリくん!? ほっぺに紅葉みたいな跡がついてるよ!?」
「驚かせて悪い。大丈夫だ」
「そ、それならいいんだけど……」
「ただ、自分が汚らわしい存在に思えただけだから」
「本当に大丈夫なの!?」




